ジョージが少しおかしい。セドリックの話をすると、途端に口を閉ざす。ジョージは、セドリックのことが嫌いなのかもしれない。
「それって嫉妬じゃない?」
廊下にいたアンジェリーナに相談してみると、さも当然のように言う。しかしラミが聞き返すと即答を返す。
「友達に嫉妬したりする?」
「友達にはしないわね。」
ふむ、と腕を組んだ。ラミはジョージとは友達である。初めにそう約束した。初めての友人であり、唯一無二の大切な友人。
「じゃあきっと嫉妬とかではないわね。」
「…ジョージに聞いてみれば?ほら」
アンジェリーナは廊下の先を指差す。向こうからはジョージとフレッドとリーが並んで歩いてきた。ジョージはラミに気付くと、優しく微笑んだ。
「やあ、ラミ。」
「おはよう、ジョージ!」
ジョージを視界に収めると、何やら違和感。いつもと違う気がする、と視線を下ろした。
「シャツ…」
「あ、今日出してみたんだ。どう?」
「どう、って……、普通…?」
違和感はシャツが全部出ているからだった。今日は出してるんだ、って思ったが、返答の困る質問をされ、普通だと答えると、ジョージは肩を落とした。
「え?あれ?ごめん、」
「いや。じゃあ、行くから。」
ジョージは一回、ラミの頭に手を載せると、すぐに立ち去ってしまった。しかしラミは視線をそらせず、廊下を曲がるまでジョージの背中を眺めていた。するとラミの隣を通り過ぎる女の子達の会話が聞こえた。
「見た?今日ジョージ、シャツ出してて、かっこよかったね!」
「ね〜!かっこよかったっ!」
「色気あるわよね〜」
……確かに。確かにかっこよかった。
そう思った瞬間、ラミの心臓は大きく脈打った。一気に熱が上がった。さっきのジョージを思い出す。今日はまだ涼しい方だから、両腕の裾を肘下まで捲り、シャツを全部出し、ネクタイを緩く締めて…
「アンジェリーナ!先戻ってるっ!」
気付いてしまった。確かな胸の高鳴り。脈打つ心臓。上がる熱。ラミは早歩きをしながら鼻まで両手で覆った。
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