初めてのホグズミードを前日に控えた本日金曜日。授業は半日で終わり、ホグズミード行きの第三学年以上の生徒達が浮足立つ中、スネイプは嫌みとしか言いようがない程の課題を出した。グリフィンドール寮の談話室にスネイプへの愚痴が飛び交う中、ラミは自室に戻ろうと階段を上っていた。後ろから声をかけられたのは、丁度その時だった。


「ラミっ!」
「アンジェリーナ?どうしたの?」
「今日はクィディッチの練習もないのよ。魔法薬学の課題、皆でやろうって話なんだけど、ラミもどう?」


嬉しい誘いだった。周りに人がいることに慣れてしまったラミは物置の一人部屋に戻っても、寂しいだけだ。


「いいの?」
「当たり前じゃない!テーブル取っておくから、道具持ってきて。」


アンジェリーナの言葉に、ラミは大きく頷き、残りの階段を駆け登った。部屋から羽ペンやら羊皮紙やら課題道具を持って談話室に戻ると、部屋の一角のテーブルを陣取っていたアンジェリーナが手を振った。そこには彼女だけではなく、アリシアやジョージとフレッド、リーもいた。


「私、お邪魔じゃない?」
「何言ってるの。心配し過ぎよ。」


微かに安堵の息を漏らし、大人しくアンジェリーナの隣の席についた。前の席はリーでその隣、つまりアンジェリーナの前はジョージだ、と嬉しそうに声をかけようとしたが。


普通に考えて、アンジェリーナの前はフレッドよね


少し残念そうに、ラミは課題を広げた。それに気付いたのか、リーは心底嬉しそうにニヤニヤしていた。そして、課題を始めたラミの羊皮紙に羽ペンを伸ばす。課題のレポートには使わない羊皮紙の隅に黒いインクが滲む。


「何?」
『席替わろうか?』


紙に書かれた言葉の意味がよく分からず、ラミは首を傾げる。するとリーは声には出さず、再び紙にペンをつけた。


『ジョージと』


瞬間、ドクンと心臓が鳴った。別にそんなこと望んでない!と心では叫ぶが、隣で課題を進めるアンジェリーナ達は気付いていない。声には出さなかった。だが、表情には出たらしく、リーはくつくつと笑った。


「よ、余計なお世話よ。」
「顔赤いけど?」


突然話し始めたリーとラミに、四人は目を向けたが、羊皮紙での会話を知らない四人にはよく意味が分かっていない。しかし、リーに何かを言われ顔を赤らめるラミを見て、心に生まれた黒い感情を、ジョージは確かに感じていた。

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