昼休みになり、大広間で昼食をとってからジョージを探した。


「ジョージ、見てない?」


見当たらない彼に、側にいたリー・ジョーダンに尋ねた。だけど彼はジョージの居場所を知らないようで、首を横に振った。肩を落とすラミに、リー・ジョーダンは慌てて言葉を続けた。


「あ、でも玄関ホールの方を歩いて行ったのを見たかも…。」
「ありがとう!」


ラミはすぐに方向転換し、玄関ホールに走った。早くしないと昼休みは終わってしまう。


「ジョージ!」


走って行くと、ジョージは呑気に玄関ホールの壁に寄り掛かりながら立っていた。


「遅かったね。」
「何時にどこなんて一言も言わなかったじゃない!」


声を荒げて言えば、ジョージは大きな声で笑った。


何なの、もう。


「さあ、行こう。」


先に歩き出したジョージに、ラミも後ろからついて行った。ジョージは今なおも顔に笑みを浮かべていた。


「どうしてにやけてるの?気持ち悪いわよ?」
「厳しい感想をありがとう。」
「いいえ。どういたしまして。」


草の上を歩きながら二人は言葉を交わす。ジョージと同じ場所で同じ時間を過ごすのは、随分久しぶりのように感じた。


ああ、そうだ。結局この間怒っていた理由を聞いていない。聞いてもいいのかな?それとも聞いちゃいけないこと?


「ジョージ、」
「ん?」


興味があることがあって、知りたくて仕方ないのに、それは抑えられる訳がなかった。


ジョージは足を止めずに、少しスピードを緩め、ラミの隣に並んだ。もうこれは聞くしかない、と決心をする。


「やっぱり気になるから聞くけど、この間どうして怒ってたの?」


ジョージは、げっ、と気まずそうに声を上げ、それにラミは首を傾げる。


「いやーそれはね、秘密。」
「気になる。」
「気になっても、秘密。」
「私がジョージの気を悪くさせたなら、二度としないから。理由を…」


ジョージは驚いて見開いた目をラミに向けた。同じようにラミも自分の発言に驚いたようで、目を丸くしていた。


今までこんなことを言ったりなんかしなかった。人間なんてどうでもよくて。なのにジョージだけは…。彼だけは失いたくなかった。自分の考え方がまるっきり昔とは変わっていた。


「あ…えっと、」


襲いくる沈黙にラミは口を開いたが、続く言葉はなかった。するとラミの頭の上にジョージの手が乗った。


「大丈夫、もう二度とそんなこと、起こらないから。」


その声が優しすぎて、次出す言葉と一緒に涙も出そうになったから、我慢した。

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