朝目覚めて、談話室に下りてもジョージはいなかった。先に行ったのか、まだ来てないのか分からなかったけど、なんだか目の奥が熱くなった。
いつもの温かい挨拶がない。昔はそれが当たり前だったのに。
ラミは大広間へ向かい、一人で朝食をとった。この孤独感が随分昔のもののように感じた。
「ラミ、おはよう。」
掛けられた声に勢いよく顔を上げると、アンジェリーナとアリシアがいた。多分顔が曇っていたのだろう、彼女達は苦笑した。
「ジョージと喧嘩したんですって?」
両隣に座った彼女達。ラミは曖昧に頷いた。
「どうして怒っているのか分からないわ。」
強がって言ってみたが、本当はもう泣きそうで仕方がなかった。
「元気出して。」
「…ありがとう。」
そう言ったとき、アンジェリーナの肩に手がのった。
「やあ、アンジェリーナ。」
声にラミも一緒になって振り向いた。フレッド、ジョージ、リーの姿があった。
「ハイ、フレッド。」
微笑むフレッドの隣で気まずそうにするジョージが目に入って、ラミは思わず声を出した。
「お、おはよう!ジョージ、」
「……」
もしかしたら、また何も言ってくれないかもしれないって思った。案の定ジョージは黙ったままだった。
すると、隣にいたフレッドがジョージの頭をバシッと叩いた。ジョージは頭をさすりながら悪態をついたが、ラミの目をしっかりと見据えた。
「おはよう、ラミ。」
いつもの優しい笑みだった。再び目の奥が熱くなるのを感じた。
「よろしい。」
フレッドは偉そうに言うと、ジョージとリーを連れて奥の方へと行ってしまった。
「あら、良かったじゃない。」
良かったのかは分からない。今まで当たり前ではなかった挨拶が突然当たり前になってしまった。その当たり前の挨拶が無くなってしまって悲しむなんて、滑稽すぎるではないか。
「…ええ、そうね。」
そのあとラミは、黙って食事をとった。
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