セドリック・ディゴリーと別れた後、重い教科書を持って寮の抜け穴を通り抜けた。
談話室ではグリフィンドール生はそこまで騒いではいなかった。中央に双子はいなかった。
「あ、ラミ!」
呼ばれた方を見ると、ジョージがソファーから立ち上がって近くに駆け寄った。机に向かっている二人もいた。多分フレッドとリー・ジョーダン。二人は顔を上げてこちらを見た。
「ジョージ!」
「あー…俺、フレッド。」
気まずそうに頭を掻いた。目の前にいるのはフレッドらしい。だから机に羊皮紙を広げてソファーに座っているのがジョージ。
「その教科書の山は?」
「ジョージの。」
ラミはソファーに座るジョージの隣に教科書の山をおいた。だが、ジョージは少し冷たい視線を彼女に向けただけだった。
「ご飯食べた?」
「……」
ラミの問い掛けにジョージは黙ったままだった。そんな彼を見てフレッドとリー・ジョーダンは心配そうに眉を下げた。
「どうかしたの?」
「別にどうも。」
あきらかに怒っているジョージに、ラミも不安そうにする。
「怒ってるの?」
「怒ってない。」
短すぎる短文にラミはたじろぐ。ジョージは再びテーブル上の羊皮紙に視線を戻した。何かしたのだろうか。何にも思い付かなかった。
「私、何かしたかしら。」
「さあ。」
不安そうにフレッドとリー・ジョーダンを見たが、二人とも顔をしかめていた。
「ごめんなさい。」
突然謝る彼女にジョージは顔を上げる。
「夕食の時間になっても帰って来なかったから、先に大広間へ向かったの。」
「…そう。」
「それで怒ってるんじゃないの?」
するとジョージは立ち上がった。そしてラミを見据えた。
「怒ってない。」
そのままテーブル上の羊皮紙を取り上げ、ジョージは部屋に戻るために階段を昇った。
「ジョージ!?」
ラミは思わず名前を呼んだが、ジョージは振り向くことなく階段の上に姿を消した。
不安そうに階段を見つめるラミにフレッドは近寄った。
「気にすることないよ。ジョージは明日には機嫌直るさ。」
フレッドが自信満々に言うから、ラミにはそれを信じることしかできなかった。
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