廊下のベンチでは不穏な空気が流れていた。


聞かれるかと思った。案の定、セドリック・ディゴリーは口を開いた。


「ヘンリーはウィーズリーのガールフレンドなのかい?」
「いいえ、違うわ。」


すると納得したように彼は頷いた。ラミはちらりと彼の方を見た。


聞いたことがある。この人、女の子に人気のあるクディッチチームのシーカーだ。大広間でグリフィンドールの女の子が騒いでいたのを覚えてる。どこの寮だったかしら?


「あなた、どこの寮だったかしら。」


するとセドリック・ディゴリーは少し驚いていた。驚くことは何もないのに。逆にラミまで驚いた。


「え?」
「あ、ああ、僕はハッフルパフだよ。しかし驚いたなあ」
「何が?」
「僕のルームメイトが昔君にラブレターを出したみたいだけど、何も興味を示さない末にあっさり振られたって。」


苦笑するセドリック・ディゴリーにラミは何も言えなかった。誰のことかは知らないけれど、興味がないのだから仕方ないじゃないか。


「僕のことは少しは興味持ってくれたのかな?」


彼は軽く笑った。確かに、今まで話し掛けられた男の子に対してラミは何にも興味を示さなかった。たとえ名前を知らなくても、自分から質問をすることはなかった。


確かに、と納得した。セドリック・ディゴリーに興味がある?どうして?


「興味…、そうかもしれないわ。」


今なら気になること、全部聞ける。アンジェリーナさんにも、アリシアさんにも。もちろんジョージにだって。


「変わったんだね、ヘンリー。昔はそんなことなかったんだろ?」


こくんと頷いた。初めて会った人なのに、もう心を開いている自分がいる。


「壁がなくなったんだね。話し掛けやすくなった。」
「それは…いいことなの?」
「もちろんさ。」


するとセドリック・ディゴリーは立ち上がった。そして座ったままのラミに視線を向ける。


「ウィーズリーのおかげかな?寮まで送ってくよ。」


セドリック・ディゴリーはウインクをすると、タオルを持った。急いでラミも立ち上がる。


「洗って返します。」


急いで取り返そうとしたが、ひょいとセドリックは手を上に挙げて阻止した。


「大丈夫だよ。」
「でも…」


俯きかけたラミに慌てて声を掛けた。


「じゃあお願いしようかな。」


タオルを受け取ってから、教科書の山に手を伸ばした。すると横からセドリック・ディゴリーの手が伸びた。


「タオルの代わりに僕が持つよ。」


大きな荷物を持って二人はグリフィンドールの寮に向かって歩き出した。

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