寮に戻ろうと思ってアンジェリーナとアリシアをおいて先に席を立った。
思ったよりも辞書やら教科書が重くて、何度かよろめいたが何とかもうすぐで寮に着くという所まで来た。しかし、ポルターガイストのピーブズに出くわし、事も有ろうか水爆弾をラミに向かって投げた。
重い荷物のせいで避けることは不可能で、教科書類を背中で庇った。すると背後でピーブズのケタケタと笑う声がして、腹が立ったが、とりあえず教科書類は無事のようだし、ピーブズは満足したようで、ふわふわ浮きながらどこかへ行ってしまった。これで一安心。
だがそれもつかの間。
「この時期に水浴びかしら?ついに頭が狂ってしまったのね。」
一部始終を見ていたスリザリンの嫌味な女の子達はクスクス笑っていた。
「君!大丈夫かい?」
びしょ濡れで床にはいつくばるラミを見付け、駆け寄った。知らない声に顔を上げれば、知らない男の子がいた。
「だ、大丈夫です。ご心配なく。」
そう言って立ち上がろうとした時、男の子はどこからともなくハンカチタオルを取り出し、頭に乗せた。そして、にっこりと微笑んだ。
びしょ濡れのラミを立たせ、一番近くの廊下のベンチに座らせた。廊下のベンチは結構混んでいて、カップルのたまり場として使われている。何となく気まずくなったが、男の子の隣に座った。
「大丈夫かい?ピーブズには気をつけて。」
男の子はハンカチタオルでラミの濡れた髪を拭いた。
「私のことはお気になさらず。」
「君は…ヘンリー?」
「…そうです。」
「僕はセドリック・ディゴリー。よろしく。」
彼はにっこり微笑んだが、ラミは曖昧に返した。するとセドリック・ディゴリーは髪を拭いたタオルを魔法で乾かし、次にラミに差し出した。
「教科書も拭きなよ。」
隣においた教科書を見ればジョージの辞書の端っこが微かに濡れていた。
「ありがとうございます。」
タオルを受け取り、すぐに拭いたが、紙がへにょへにょになってしまった。あからさまに肩を落としたラミを見て、セドリック・ディゴリーは元気づけるように言った。
「大丈夫、すぐ乾くよ。」
「あ、私のではないんです。」
「誰の?」
「ジョージ・ウィーズリー。」
するとセドリック・ディゴリーはあの赤毛の双子か、と呟いていた。
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