「荷物重そうね。少し持つわよ?」
大広間に向かう途中の廊下でアンジェリーナ・ジョンソンとアリシア・スピネットと会った。
突然話し掛けられて、驚いた。まさか普通に話し掛けられるとは思わなかったから。
「あ、大丈夫よ。」
とラミは言ったが、聞こえなかったのか聞いてなかったのか、二人は勝手にラミの手から二冊ずつ教科書を奪った。二人に奪われたから、結局半分くらい軽くなった。
「これ、ジョージの?」
「ジョージは?放課後デートだったんでしょう?」
アンジェリーナは手の中の教科書を見ながら言った。立て続けにアリシアも尋ねる。
「フレッドに連れて行かれて、戻って来なかったから。」
「あら、今頃二人揃ってフィルチに捕まって、たっぷり扱かれてるわよ。」
案の定大広間には双子の姿も、フィルチの姿も見当たらなかった。
大丈夫かしら?
少し心配になったところで、ラミは席についた。すると当然のように隣にアリシア、向かいにアンジェリーナが座った。
「ご一緒よろしいかしら?」
アリシアが微笑んだ。
信じられない。私が一緒に食事をとっても?気分を害さないかしら。
大丈夫だよ、自信持って。
耳にジョージの声が響いた気がした。辺りを見回しても、もちろんいるはずがない。
でもジョージは応援してくれてる。大丈夫、自信持って。自分に言い聞かせ、ラミは二人に向かった。
「ええ、喜んで。」
女の子との食事は随分久しぶりだった。会話も華やかな気がした(決してジョージがむさいって訳じゃないのよ。ただ…そう、やっぱり女の子がいないと華がないと言うか)。
「ラミはジョージのこと好きなの?」
アンジェリーナの突然の問い掛けに口に含んだ食べ物が飛び出ようとした。ぐっと我慢。
「好き?ジョージは友達よ。友達のことを好きなのは当然よ。」
きっぱりと言うラミにアリシアとアンジェリーナは溜め息をついた。
「そう。なら、いいのよ。」
いいって何が?彼女の言うことはよく分からない。
「あ、それより、この間の練習の時、本当にありがとう。」
アンジェリーナはしっかりラミを見据えて、言った。なんだか照れ臭くなって、顔を俯かせた。
「わ、私の方こそ、…ありがとう。嬉しかったわ。」
最後は消え入りそうな声で言った。するとアンジェリーナは嬉しそうに微笑んだ。
「でも驚いたわ。まさかアンジェリーナがあんなことを言うとは思わなかったもの。」
アリシアはミートパイに手を伸ばしながら言った。
「ラミのことを羨ましいって思ったこともあるわ。でも、フレッドが…」
「フレッドが?」
「ラミは綺麗だけど、私のこと好きだって言ってくれたのよ。」
アンジェリーナは幸せそうに笑った。アリシアも少し呆れていたが、親友の幸せそうな姿に顔を綻ばせた。
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