図書館には二人の姿があった。ラミとジョージ。一言も会話をせずに羽ペンを動かす。ラミはジョージからもらった羽ペンをせっせと動かした。
そんな姿に、ジョージは顔を綻ばせた。今まで彼女が怒っていると思って悩んでいたが、ただの勘違いで終わった。
「そろそろ課題やったら?」
さっきから全く進んでいないジョージの課題を見てからラミは顔を上げた。
「もうルーン文字がちんぷんかんぷんでね。辞書があっても翻訳なんて出来っこないさ」
使い古して少しボロボロの辞書を指差して言った。机の上には羊皮紙とインク壺、教科書と辞書が並んでいる。ジョージの教科書も辞書も新品ではなかった。
「頑張ってるみたいね。」
ボロボロの辞書は努力の結果だろうと考えたラミにジョージは笑った。
「これ、兄貴達からのお下がりなんだ。俺がこんなに使うはずないだろ?」
「お兄さん?パーシー?」
ラミが口にしたのはグリフィンドールの監督生であるパーシー・ウィーズリーの名。確かにジョージの兄の一人でもある。
「パースは一番駄目な兄だ。」
「監督生なのに?お兄さんたくさんいるの?」
ラミは課題よりもジョージの家族構成に興味を持ったらしく、羽ペンを置いて身を乗り出した。
ジョージもラミの方を向いて話しはじめた。
「俺達は七人兄弟さ。」
予想外の多さにラミはあんぐりと口を開けた。
「一番上の兄貴がビル。次がチャーリーで、その次がパーシー。フレッドに俺、今年入学のロン。それから妹のジニー。」
「多いのね!お母さん大変そう。」
するとジョージは再び笑った。
「大変だとも!特に俺達双子の相手がね。」
「本当ね、お気の毒だわ。」
たくさんの子供がいて、更にフレッドとジョージのような問題児が二人もいるなんて。考えただけでも鬱病になりそうだった。
「ビルはグリンゴッツで働いてて、チャーリーはドラゴンの研究に没頭さ。」
ふーん、とラミは相槌を打った。ウィーズリー家がとても賑やかそうで羨ましくなった。気付くといいなあ、と口にしていたようだ。ジョージが目を輝かせた。
「クリスマス休暇になったら来るかい?」
憧れだった。休暇中に誰かの家に行くことも。叶わぬ夢だったが。だがまさか誘われるとは思わなかった。
「ありがとう。でも遠慮しておくわ。家には帰りたくないの。」
二週間近く居座ることなんて出来ないから、断っておいた。本当は行きたかった。休み中もジョージと一緒にいたかった。
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