「じゃあ具合が悪い訳じゃないんだね?」
「…大丈夫。」


桶を片付けながら、ジョージは尋ねた。床にはつるつるの豆が転がっている。スプラウト先生はキーキー声をあげていたが、フレッドもジョージも知らない振りをしている。


「何よ、あれ。」


突き刺さるような鋭い声が耳に届いた。


ああ、またか。ジョージのおかげで傷付かないようになったのに。


でもジョージは隣の机で、フレッドとアンジェリーナと何やら喋っていた。


「綺麗っていいわね。」
「羨ましいわ。ジョージにもちやほやされて。」


思わず振り返った。多分相当顔が引きつっているのだろう。怒りが滲み出ている気がした。


「な、何よ。」


後ろにいた女の子たちは少し身を引いていた。


「羨ましいなら変わってあげるわ!ちやほやもされてない!」


教室のみんながこちらを見た。ジョージは心配そうにラミに歩み寄った。


「何事です?早く片付けなさい。」


スプラウト先生は足早にこちらに向かって来た。ラミは最後に一度ジロリと睨んでから、片付けに徹底した。


―――


昼食の間、大広間で頭を抱え込むジョージの隣にフレッドは腰を下ろした。


「おーい、ジョージ?」
「俺、なんかしたかな」


ジョージは頭を抱え込みながら呟いた。


「いや、さっきのは相手が悪いだろ。」
「うーん」
「ハイ、フレッド。」


アンジェリーナがフレッドの肩に手をおいた。彼女の声にジョージは顔を上げた。


「ジョージ?どうしたの?」
「相棒はラミに心を奪われてしまわれた。」


フレッドはおどけて言うと、アンジェリーナはやっぱり!、と顔を綻ばせた。


「あれだけ綺麗だもの、当たり前だよね。」
「それ、本人に言わないでくれよ。」
「あら、どうして?」


ジョージの発言にアンジェリーナは身を乗り出す。フレッドは気にするな、と手を振っていた。


「さっきの見ただろ?ラミが怒ったの。」
「それは彼女達が、ラミはジョージにちやほやされてると言ったからでしょ?今まで言われてもあんなに怒ったところは見たことないもの。」


確かに、と双子は頷いた。今までただでさえその美貌に目立つラミがあんなに目立ったことはなかった。


「ジョージのことを悪く言われたから怒ったんじゃない?」


アンジェリーナの言葉にジョージは柄にもなく、赤毛に隠れる耳を照れて赤くした。

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