朝起きて鏡を見て、驚いた。目が真っ赤になっていた。それから昨日は夕食をとらなくて、空腹感も絶頂を迎えた。
談話室に出てから、後悔した。見たくなかったなあ、と溜め息をつく。
「やあ、ラミ。朝食へ行こう!」
話し掛けてきたのは多分ジョージ。ソファーの所にいた双子とアンジェリーナに目を奪われていると、気付いたのか双子の片割れがこちらに来た。それが多分ジョージ。ジョージは、友達だから。
「…ごめんなさい!」
「ラミ!?」
何に対しての謝罪かは自分でも分からなかったが、とりあえずジョージの隣を走り去っていた。抜け穴から談話室を出た。
どうして自分がこれほど傷付いているのか。それはきっと唯一の友人が異性だから。一緒にいてくれようとした人にはガールフレンドがいる。ジョージが唯一の友人でなければ、こんなに負い目を感じることはなかったのに。
―――
今日の午前授業は薬草学。二人一組になって花咲か豆の作業を行う(と、前回の授業の時にスプラウト先生が言っていた)。
この二人一組が一番嫌い。
毎回毎回余った人と組むラミは、今回は初めてジョージと組めると思っていた。初めて楽しみになったのに。アンジェリーナの顔がちらついた。
「では二人一組になって桶を取ってください。」
スプラウト先生の声にクラスのみんなは動き出す。ラミは動けずにいた。
「ラミ、やろうぜ?」
ジョージは席に座ったままのラミの肩に手をおいた。ラミは不安げに顔をあげた。
「アンジェリーナは?」
「は?アンジェリーナ?」
ジョージは何言ってるんだ、と言うような顔で桶を取ってきた。豆の木からピンクの莢をむしり取る。中からつやつやした豆を押し出して桶に入れる。その間もずっと浮かない顔をしているラミにジョージは心配していた。
「どうしたんだい?具合悪い?」
豆を桶の中に向かって飛ばしながら尋ねるが、ラミはふるふると首を横に振る。ジョージは困ったように頭を掻いた。隣の机ではフレッドとアンジェリーナ・ジョンソンが二人で豆を剥いていた。ちらちらと見てしまうのは、負い目を感じるから。
フレッドはそんなラミに気付き、豆をジョージの方に飛ばした。ジョージも応戦する。そんな双子にラミは笑う気がなくても、笑ってしまった。
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