地下牢教室の掃除は二人でこなすにも大変だった。スネイプはどれだけ教室を汚せば気が済むのか、と内心文句を言いまくっていた。


教室の中はラミとジョージしかいないが、話し声はなかった。まだ怒っているのかとジョージはラミの様子を伺った。


「…そうだ!」


突然のジョージの声にラミは顔を上げた。


「この罰則が終わったら、クィディッチの練習、見に来ないかい?」
「え?」


ラミは驚いて目を見開いた。クィディッチの練習を近くで、と言うより生で見たことがなかった。本当は少しだけ興味があったが。でも見に行く人も理由もなくて、行ったことなんてなかったし、実を言うとクィディッチの試合すらまともに見たことがなかった。


「い、いいの?」
「もちろんさ。」


ジョージの誘いに、ラミは微笑んだ。そして手を動かすスピードが速くなった。その後は再び沈黙だったが、さっきまでの暗い雰囲気はなかった。地下牢教室の雰囲気には似合わず、ラミの心中は踊っていた。


―――


クィディッチ競技場に入るのは二度目だった。一年の時に初めてできた友人と一緒に観戦しに来たが、その後は来なかった。試合の時も、ラミは一人グリフィンドール塔の窓から見ていただけだった。


掃除を終え、ジョージと一緒に競技場に入ると、グラウンドの両端にある三本の金の柱の周りを、箒に乗ったウッドやアンジェリーナ、フレッド達が飛び回っていた。


「すごい…。」


ラミは一年の頃の飛行訓練で、少しは飛べたものの地上からあんなに上がることなど出来なかった。思わず感嘆の声をもらすラミに、ジョージは微笑んだ。


「ジョージ!」


叫ぶような声に顔を上げると、キャプテンのオリバー・ウッドがこちらに向かって飛んできた。そして目の前で箒から降りる。


「す、すごい!」


ラミは目を輝かせながら、小さく拍手をした。さすがのウッドもラミのことは知っているらしく、少し顔を赤らめた。だがすぐにジョージに向き直る。


「ジョージ、罰則を受けて練習に遅れるだけでなく、ガールフレンドまで連れて来て、たるんでるぞ!」


目の前でウッドが怒鳴り、身を縮めるジョージを見て、ラミは一歩前に足を出した。


「すみません。今回の罰則は私のせいなんです。彼は早く練習に行くために、一言も喋らずに罰則をこなしました。彼を責めないであげてください。」


隣で深々と頭を下げるラミにジョージは開いた口が塞がらなかった。

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