放課後、図書館の本棚から『古代ルーン語のやさしい学び方』を引っ張り出した。昨日の魔法薬の課題を終えたラミは、図書館で自分の時間を楽しんでいた。


席について本を読む。たったそれだけのことなのに、図書館にいた生徒はちらちらとラミを見る。そしてこそこそと有ること無いこと噂話を始めた。


別に、気にすることはないわ。


脳内放送を大音量にして、本を開いた。その時、視界の端に赤毛が映った。


ジョージ…


一度顔を上げたが、すぐに本に戻った。あんなことを言ってしまった自分にはジョージと話す権利はない。


ジョージはもう、自分には関係ない。


そう思っても、動き回る足音が気になり再び顔を上げた。ジョージはラミを見ていた。目が合う。今度は確実。


「…っ」


ラミもジョージを見たが、彼はふい、と視線をそらし、止めた足を再び動かし始めた。


何かを探しているんだ。


自分の脳内音声に驚いた。ジョージはどうでもいい。自分とは何も関係がない。なのに、ジョージに興味を持つ自分がいる。


もう一度顔を上げると、彼はもういなかった。

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