放課後、図書館の本棚から『古代ルーン語のやさしい学び方』を引っ張り出した。昨日の魔法薬の課題を終えたラミは、図書館で自分の時間を楽しんでいた。
席について本を読む。たったそれだけのことなのに、図書館にいた生徒はちらちらとラミを見る。そしてこそこそと有ること無いこと噂話を始めた。
別に、気にすることはないわ。
脳内放送を大音量にして、本を開いた。その時、視界の端に赤毛が映った。
ジョージ…
一度顔を上げたが、すぐに本に戻った。あんなことを言ってしまった自分にはジョージと話す権利はない。
ジョージはもう、自分には関係ない。
そう思っても、動き回る足音が気になり再び顔を上げた。ジョージはラミを見ていた。目が合う。今度は確実。
「…っ」
ラミもジョージを見たが、彼はふい、と視線をそらし、止めた足を再び動かし始めた。
何かを探しているんだ。
自分の脳内音声に驚いた。ジョージはどうでもいい。自分とは何も関係がない。なのに、ジョージに興味を持つ自分がいる。
もう一度顔を上げると、彼はもういなかった。[ 20/148 ] [←] [→]