次の日は古代ルーン文字の授業だった。ラミの一番好きで、一番得意な科目。昨晩羽ペンをなくしてしまったが、新学期は始まったばかりなので替えのペンはたくさんあった。ただ、魔法薬の課題を終えてないことが問題だ。


ジョージ・ウィーズリーめ。


そうは思うが、昨晩のことを思い出すと、嬉しくなった。腕を掴まれただけなのに。


朝食をとるため、ラミは自室を出た。毎日毎日談話室では朝からはちゃめちゃ騒ぎだ。寮のつくりを変えてほしいと切実に願う。だが、この日は双子とリー・ジョーダンの姿はなく、静まっていた。


少し不思議に思いながらも、階段を下りた。するとソファーに座る赤毛の姿が視界に入った。後ろからだとどちらかかは分からないが、リー・ジョーダンも、片割れもいなかった。


一人?珍しい。


そんなことを思っても話し掛ける訳ではない。すると足音に気付いたのか、赤毛は勢いよく振り返った。目が合うと一瞬で分かった。ジョージだ。


「ラミ!おはよう。」


軽く会釈をしたままラミは扉に向かった。だが、それは阻止される。


「ちょっと待ってくれよ。」


ジョージはラミの前に立ち、言った。その手には、一本の羽ペンがあった。


紛れも無く、昨日自分が落とした物だった。だが、ジョージがペンを握り締めているのを見て、げんなりした。そんなペンはもう自分には必要ない。新しいのがある。


「これ…、」


ジョージは恐る恐るペンを差し出した。ラミはじっとそれを見つめた。


「ラミのだろ?」


ジョージの優しい声が耳に響いた。そんな優しさ、求めてない。


ラミは一瞬悩んだが、すぐに行動に移した。ジョージの手からペンを取ると、すぐそばにある暖炉に向かって投げ入れた。


「お、おい」
「あなたの触ったペンなんて、いらない。」


驚きのあまり、ジョージは口を開けている。


「私、性格最悪なの。分からないの?」


少し俯き、冷たく言った。最近よく自分に話し掛けるようになったジョージのことを周りが悪く言っているのも、知っていた。ラミはジョージの優しさを素直に受け取ることなんて出来なかった。


「あなたは私の友達じゃないでしょう?気安く話し掛けないで。」


悔しかった。本当は嬉しかったのに。それを素直に表現なんて出来ない。周りの目を気にするラミはジョージの優しさに甘えることはできない。


友達なんて、いないの。仕方ないでしょう?こんなにもヘンリー家を憎んだのは初めてだった。でも、こんな私に話し掛けてくれたのは、ジョージだけ。


ありがとう、ジョージ


羽ペンは暖炉の中で、紅い炎をあげて燃えていた。

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