夕食のために廊下を楽しそうに歩く女の子たちがいた。もはや定位置となった中庭の東寄りのベンチ。ラミ以外が座ったところを見たことはない。


「ハリー!」


廊下で彼を呼ぶ声がした。彼はホグワーツに入学して、ちゃんと友達ができたようだ。


羨ましいよ。


今まで一度だってこんなこと思ったことはない。ずっと自分の気持ちを隠してきたから。まさか、あんなちゃらんぽらんな双子のウィーズリーに崩されるとは思わなかった。これまでに組み立てた私の態勢が。こんな一瞬で。


久しぶりに人間に触れたら、やっぱり温かかった。


「ハリー?」
「ごめん、先行ってて」


廊下に響く彼の声。視線を向けてみると、中庭の入口に彼の姿があった。じっとこちらを見ているのはきっと見間違いじゃない。


「あの…ヘンリー?」


その名前をどれだけ憎んだことか。見ず知らずの男の子に何故呼ばれなければならない?


「なに?」


しっかり彼を見据えて、そう答えればハリーはビクッと肩を揺らした。


「夕食、行かないの?」
「あなたに関係ある?」


関わりを持ちたくない場合、即返事をするのがポイント。ハリーは予想外の返答にたじろいだ。


だが今度はラミがたじろぐ番。


「もちろん。同じ、グリフィンドールだもの。」


嘘でしょ。グリフィンドールってみんなそうなの?放っておいてほしいのに、空気が読めないの?


ラミは大きく溜め息をついた。


「ジョージが、」
「今その名前を、聞きたくないわ。」


ラミの言葉にハリーは驚きを見せた。しばらく彼は黙っていたが、また口を開いた。


「とりあえず夕食行こう?食べられなくなっちゃうよ?」
「関係ないじゃない。放っておいて!」


強く言い放つと、ハリーは少し怯んだ。そしてきつく口を閉じ、すぐに中庭から立ち去った。


いったい何の用だったの?


なんだか物凄く居心地が悪くなって、ラミは寮に向かって歩き出した。


そこに、羽ペンを落としたのも気付くことなく。

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