ジョージの視線が突き刺さるように痛い。しかし何も言えない。自ら、『ジョージに振られた』なんて言われたとは白状出来ない。すると再びエレミーが口を開いた。
「ジョージ、あんたが信じるべき言葉は、その女の言葉じゃない。優先するとかしないとか関係なくて、何よりもまずラミの言葉を信じるべきなんじゃない?」
胸の辺りに突っ掛かっていた何かがすとんと落ちた。その通りだと、ラミは思った。本当にマリスと友達になったのなら文句を言う権利はなかった。しかしマリスがジョージに近付いた理由が自分をおとしめるためなのだと分かっても、それを本人に言おうとは少しも考えなかった。どうせジョージは信じてくれない。そういう気持ちが初めから存在したからだ。エレミーはそこまで気付いた上での発言だった。
「なっ、俺はいつでもラミを信じてるさ。」
「じゃあ言ってあげなよ、本当のこと。」
エレミーはラミの背中を押し、ジョージの前に立たせた。そしてマリスに向かってとっとと退散しろ、空気の読めない蛇、と罵り追い払ってから、自分もまた二人の前から立ち去った。階段の踊り場に残されたラミとジョージ。不穏な空気が流れる。そして先に口を開いたのはジョージ。
「…ごめん。」
突然の謝罪にラミは目を丸くした。まさかジョージが謝るとは思っていなかったのだ。
「最近ずっと悪戯のことでいっぱいだったから…」
「そんなこと別に気にしてない。」
ラミの口から出た強気な言葉は嘘で塗り固められていた。気にならないはずがない。するとジョージは淋しげに顔を曇らせ、そっか、と小さく呟いた。
「あの子と仲直り出来たんだな。」
「ええ。スリザリンの女の子達が言うことに言い返せなかったら、代わりに彼女が言い返してくれたわ。」
「ラミが言い返せなかった?嘘だろ?」
「本当よ。その通りだと思ったから、言い返せなかった。」
ジョージは心配そうにラミに視線を向けた。しかし彼女は少し機嫌が悪そうに、そっぽを向いていた。そしてすぐにジョージの方を向き、意を決して口を開いた。
「ついにジョージにまで捨てられたか、って。私じゃなくてマリスを選んだ、って。その通りだと思ったわ。だから何も言えなかった。そしたらエレミーが、彼女達が私をおとしめるためにマリスをジョージに近付かせた、って暴いてくれたの。」
ジョージは何も言わずにラミの目をじっと見つめた。その表情には微かに吃驚が混じっている。ラミは一度息継ぎをしてから、再び続けた。
「マリスじゃなくて、私を信じられる?」
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