「…そうね。」
切り捨てるような返答に、ラミの胸は痛んだ。だが仕方ないのだ。憧れ、と言ってもやはりそれは昔のことで。時間が流れれば抱く感情は変わるし、関係も変わる。
「今は羨ましい、なんて全然思わない。だから、」
エレミーの強い眼光は、ラミに向かっていた。それに受けて立つように、ラミも彼女を見つめた。
「だから、ごめんなさい!」
彼女は素直に、全身でその謝罪の意を示すように頭を下げた。ラミはぼんやりとエレミーの頭のてっぺんを見つめていた。走馬灯のように、彼女と過ごした映像が脳裏に浮かんでは消える。こんなことになるなんて、あの頃は全く想像もしてなかった。
「エレミー…」
なんて身勝手なんだろう、という感情と、素直に謝られて嬉しいという気持ちが入り交じる。どちらが優勢だったのか、と言うと答えはすぐに出た。
「私、そんな簡単に許せないよ。」
エレミーは頭を下げたまま黙って聞いていた。ラミの手には自然と力が篭められる。泣きそうになる思いを必死に押し込めた。
「でも…、でも駄目ね。エレミーのこと、嫌いになんてなれない。」
しかし押し込めきれなかったらしい。大粒の涙が頬を伝った。そしてお手洗いの冷え切った床を濡らしていく。それに気付きエレミーは顔を上げた。
「昔のようにはもう戻れないけど…それでも、私はやっぱり、エレミーが好きよ。」
エレミーはラミに近付き、ローブの裾で彼女の涙を拭いた。
「だって、初めての友達だもの…。」
ラミは笑った。頬を濡らしながら、それでも笑った。そんな彼女の笑顔を、何よりも美しいとエレミーは思った。
「……寮に戻ろう、一緒に。」
彼女の言葉に、ラミは大きく頷いた。
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