ラミの眉間にはシワが寄っていた。まだ状況を理解出来ないらしい。しかしお構いなしにエレミーは口論を続ける。


「ラミをおとしめるためにマリスをジョージに近付かせたの、あんた達でしょ?」
「言い掛かりはよしなさいよ。人のせいにしないで。」
「だってこの間聞いたもの。あんた達がマリスに次の指令出してたの。」


スリザリンの女子は一瞬怯んだ。そこで慌てて言い返すのだが、墓穴を掘った。


「なっ!その話は寮でしかしないわ!」
「ほら、やっぱり。こんな安っぽい鎌に引っ掛かるなんて、さすが蛇。」


自信満々に言うエレミーに、ラミは唖然とする。目の前のエレミーは本当に彼女なのだろうか。昔の彼女とは掛け離れている。そこで一つの仮定を生み出す。目の前のエレミーはジョージがポリジュース薬でも使って変身したのではないか、と。しかし疎遠となっている今、ジョージがそんなことをするはずがない。そこでリーかフレッドだという結論が出た。ラミはその結論を信じ切って肩の力を抜いた。そして彼女達が尻尾を巻いて逃げた後、ラミはエレミーに微笑みかけた。


「ありがとう。でもいつの間にポリジュース薬なんて作ったの?」


リーかフレッドかどっちだろうと考えながら、ラミは言った。しかし目の前の彼女はおどけることなく、真剣な眼差しをラミに向けていた。そこでドキッと心臓が鳴る。まさか本物なのか、という疑念が渦巻いた。


「……あたし、ずっと謝りたかった。」
「え?」


真剣な声色に、ラミの喉はカラカラに渇いた。緊張と不安が入り交じる。今まで逃げ続け、向き合いたくなかったものが、目の前にいる。エレミーの表情が昔の彼女と重なった。


「あの日、ラミの机の上にあった手紙を勝手に見たこと、ずっと謝りたかった。」


エレミーが好意を寄せていた人物からのラブレター。確かにあの日ラミは手紙を受け取り、机に置いておいた。それは見せびらかせるためではない。ラミは申し訳ないとは思いながらも隠すのは良くないと考え、本人に断った後エレミーに報告するつもりだったのだ。しかしラミが思うようには行かなかった。


「……あたし、ずっとラミが羨ましかったの。」


ぽつりぽつりと、エレミーが自分の気持ちを吐いていく。腹を割って話すのは初めてだった。

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