ただ、一番嫌なのは周りの視線。そして、天敵の寮。


「あんた、振られたんだってね。」
「ついにウィーズリーにも捨てられたか。」


お手洗いはラミの無防備な場所だ。近くにアンジェリーナやアリシアはいない。手を洗っていると、目の前の鏡に自分を見るスリザリンの女がいた。昔から何かと喧嘩を吹っ掛けてくる。しかし何も言い返せない。ジョージがラミを振ったという噂はどこもかしこも耳にしている。そんな彼女の弱い話を、スリザリンが放っておくはずがない。


「何も言い返せないんだ。」
「否めないもんね〜。ウィーズリーに捨てられたってこと。」
「ウィーズリーはあんたの大っ嫌いなスリザリンのマリスを選んだんだから。」


悔しくて悔しくて。でも言い返せない。何も言い返せない。ラミは顔を歪ませた。その時だ。個室の扉が大きな音を立てて開いた。


「スリザリンの醜い蛇共の目は節穴のようで。」


誰もが視線を彼女に向けた。まさか、刃向かってくるとは誰も思わなかった人が言い返しているのだから。ラミは目を疑った。


「はあ!?何よ、あんた。」
「ジョージがいつ蛇を選んだって?初耳よ!そもそも、あんた達がマリスを仕向けたくせに!」


スリザリンからは動揺が感じられた。しかしラミには何が何だか理解しがたく。何より、この人が自分のために言い返しているのが一番信じられない。なぜならそれは、誰よりも先にラミを見放した張本人なのだから。


「エレミー…」


久しぶりに呼ぶ名前。昔の親友は確かに、今ラミのためにスリザリンに刃向かっていたのだ。

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