ジョージの息遣いを耳元で感じ、背中やお腹周りからはジョージの体温が伝わる。未だ外からはパーシーの声がして、出るに出れない状況。早く早くと祈るラミをよそに、ジョージは口元を抑えていた手を外し、彼女の左頬に添えた。そして少しだけ力を入れ、ジョージの方に向かせた。


「っ!?」


瞬間の出来事でラミの頭は状況についていけていない。ただ薄暗い中、目の前にあるジョージの睫毛を眺めていた。後ろから抱きしめたまま、ジョージはラミの唇にキスを落とした。驚いているのかラミの唇は半開き状態で、舌を入れるには容易かった。


「うっ…ん」


物置という密室に、ラミの微かな声が響く。ラミの頭が真っ白になっていくのに対し、ジョージの頭は彼女で満たされていた。息苦しくなると、微かに離れ、再び角度を変えて絡み合う。ラミもジョージに委ね、必死にお互いを求め合っていたのだが。


「やめてっ!」


ラミの脳にアンジェリーナの話が蘇った。この深い深いキスの延長線上に、未知の何かがあるような気がして。ジョージの手が行き場を失った。


「あ…ごめん。」
「……パーシー、もういないわ。」


そう言ってラミは扉を開けた。久しぶりの明るさに目が眩む。ホールにはパーシーの姿はなく、閑散としていた。何となく気まずい空気が漂う。ジョージは調子に乗ってしまったのかと不安に思ったが、ラミの真っ赤な顔を見て不安は消え去った。


「ラミ?」
「なっ!な、なに!?」


あまりの動揺っぷりにジョージは驚く。ラミの顔を覗き込むと、彼女は勢い良く背中を向けた。


「も、戻ろうよ…」
「ああ、うん。」


何かあったのか、とジョージは考えるが思い当たる節はない。それを彼が知るのはあと少し先の話。寮に戻るためにクリスマス模様に飾られた校舎を、二人は他愛ない会話を交わしながら並んで歩いた。

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