次の日は日曜日で、ホグズミード行きの日ではないがクリスマス休暇前の最後の休日である。本来ならば意気揚々と雪合戦をしに行くフレッドとジョージだが、今日は昨晩アンジェリーナが言っていたように、二人は抜け道を使ってホグズミードに行っている。ジョージは文句を言いながら自分の課題に取り組んでいた。ラミは早いこと課題を終わらせたため、暇を持て余せていた。クリスマスシーズンに合わせた校舎内をうろうろしていると、前から見知った顔が歩いてきた。


「セドリック!」
「ああ、ラミ。」


ラミは思わず駆け寄り、笑顔をこぼした。するとセドリックも照れたように頭を掻いた。隣には彼のルームメートもいる。


「元気?」
「もちろん。ラミは?」
「元気よ!」


するとセドリックは黙り込んだ。ラミもとくに用事はないため、会話が続かない。沈黙が流れた。しかしすぐにセドリックは口を開いた。


「…ジョージとはうまくいってる?」


突如としてラミの顔は赤く染まった。ただ単に昨晩のアンジェリーナの話を聞いて、少し意識していただけなのだが。ジョージと何かあったのだろうか、と考えれば考えるほど、セドリックは胸を痛めた。


「ええ…まあ。」
「そう。良かった。」
「セドリックは?ほら、年下の女の子…」
「ああ。」


そして再び沈黙が訪れる。セドリックのルームメートも気まずそうにしている。彼はじっとラミを見つめるだけで何も言わなかった。しかし彼女としては真剣な眼差しを送られる覚えもない。


「あ、じゃあ私行くね。また。」


何となく気まずくなって、ラミはセドリックに背中を向けた。そしてもと来た廊下を歩いて行った。その背中には熱い視線を感じながら。


「…なんだよ、年下の女の子って。」


ラミの背中を見送りながら、セドリックのルームメートは言った。彼はラミにラブレターを出していたが、早くも玉砕してしまったため今はもう吹っ切れていた。しかしセドリックはまだその想いを捨てきれていないのだと彼は知っていた。


「ラミがジョージのことを好きだと言った時、聞かれたんだ。だから嘘をついた。」
「…ジョージとのこと、応援してる振りなんかするなよ。」


セドリックは切なそうにラミの後ろ姿を見つめていた。ルームメートも悲しげだった。しかしそこに未練は全くなく、ただ単に友人の叶わぬ恋愛を見守るだけだった。ラミが廊下を曲がろうとする直前に、セドリックは小さく声をこぼした。


「…俺の方が先に会ってたら、俺を選んでくれたのかな。」
「え?」
「……先も後もないんだよな。」


ジョージだからだよな、と呟き、ラミの姿が見えなくなる前に、セドリックも彼女の向かう反対側に向かって歩き出した。

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