そもそもどうして、クィディッチのユニフォームを着たまま図書館にいるの?それにウィーズリーが勉強?似合わないにも程があるわ。
「…どうぞ」
本を机の上を滑らせ、ジョージの前に置いた。ジョージが直接ラミから本を受け取ろうと出した右手は、虚しく宙に浮かんだ。
ジョージは本を見て、溜め息をついた。
「本棚に戻しておいて。後で取りに行くわ。」
つまり戻って来ないでほしいということ。ラミは教科書に向き直った。すると再び隣から溜め息が聞こえた。
幸せが逃げるって言ったのはどこの誰かしら?
「そんなに怒ってるのかい?さっきは悪かったと思ってるよ。」
ラミは何も答えずに羽ペンを走らせる。
誰も怒ってなんかない。誰も悪いなんて言ってない。
「ラミ?」
「あなたは邪魔をしに来たの?用事がないのならはやく行って。」
するとジョージは突然ラミの隣の席に座った。椅子を引く音にぎょっとして隣を見れば、ジョージは肘をついてこちらをじろじろ見ている。
なにこの人、頭おかしいの?
とりあえず無視を続けようと、教科書に視線を戻す。めぼしい文章を羊皮紙に写す。だが、隣から送られ続ける視線に集中できるはずもない。
痺れを切らしてラミは立ち上がった。そして教科書やら羊皮紙やらを重ね、他の席に移動しようと両手に持ち上げた時。
「行くなよ。」
ジョージの右手が、立ち去ろうとしたラミの右腕を掴んだ。そして、弱々しい彼の声が耳に届いた。
「…え?」
思わずラミはジョージを見たが、一瞬のうちに顔を反らしてしまった。
右腕に触れた温もりが何故か切なくて、ラミはジョージの手を振りほどいた。
課題をやろうと思ったのに。
そんなことを考えながら全速力。行き場は?談話室?大広間?自分に行く場所なんかないと気付くと、中庭で足を止めた。孤独を覚悟して、ずっと自分を守ってきた。なのに誰かに近付かれると、防御壁は一瞬で崩れ去る。
何故か溢れ出る涙を、ラミは必死に拭った。
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