クリスマス休暇を目前に控えたとある夜。夕食後、ラミはジョージと一緒に寮に戻るために廊下を歩いていた。壁際の蝋燭の火が二人分の影を床に映し出していた。


「クリスマス休暇、近いな。」
「そうね!ジョージは残るの?」


ラミの問い掛けにジョージはうーん、と唸った。彼としては是非彼女に隠れ穴に遊びに来てほしい。ウィーズリー家は兄弟が多いためか、それぞれの友人が遊びに来ることもあって来客用のベッドだってたくさんある。気兼ねなく泊まれるホテルのようなものだ。しかし、ラミとまだ仲良くなって間もない頃、何気なく誘ってみたものの呆気なく断られてしまったことを思い出した。


「…フレッドと相談かな。ラミは?」
「残るわ。家には帰りたくないの。」


ジョージの言葉に相槌を打ちながらも、ラミの視線は中庭に向かっていた。その先には思い出のベンチがある。


「ラミ?」


そこでようやくラミの視線が中庭に向いているのに気付いた。不思議そうに彼女の名前を呼ぶと、ラミは何も変わらず視線をジョージに戻した。


「どうした?」
「ん、ちょっと。何でもない。」


一人の時間を過ごした東寄りのベンチでは、一年生の女の子が楽しげに談笑していた。あの子達はラミがどんな気持ちであのベンチにいたのか知りもしない。


「…ラミ?」
「もう、あそこには戻らないんだなあって。」


東寄りのベンチは、彼女にとっては辛い時間を共に過ごした相手でもある。


「ジョージ。」


ラミはジョージの空いた片手に自分の手を絡ませた。突然の温もりに視線を向けると、ラミは嬉しそうに顔を緩ませていた。思わずジョージも口角が上がっていき、咄嗟にもう片方の手で口元を隠した。そして言葉を探す。


「…何か欲しい物とか、ある?」
「欲しい物?」


ジョージの問い掛けの意図が分からず首を傾げたが、すぐにぴんと来た。クリスマスプレゼントか。微かに赤面しているジョージにラミはくすくすと笑った。


「そうね、身に付ける物が欲しいわ。」


彼は少しむっとしている。笑われたことが嫌だったらしい。そしてラミを困らせてやろうと、加虐心に火を点す。


「ん、そっか。」
「ジョージは?」
「ラミが欲しい。」


何だかいやらしい言葉だ。ラミもそう感じたのか、顔を真っ赤に染め上げていた。

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