「私、本当に、ジョージと出会えて良かったわ。」


本気で言う彼女にジョージは照れを見せる。


「もっと早くに出会いたかった…。」
「話したことはあったけどね。覚えてる?ほら、あの辺で…」


ジョージが指差す方向にラミは視線を向ける。中庭横の廊下。全く覚えがなくて、ラミは首を傾げる。


「スリザリンの馬鹿野郎と喧嘩してて、飛ばされた杖を取ってあげた!」
「うーん…」
「ほら、雪だるまに、」


あ!、とラミは声を上げる。思い出した。友達を庇って喧嘩した時、飛ばされた杖を取ってくれた人がいた。何故か雪だるまに突き刺して、返してくれた謎の人。


「あれジョージだったの?」
「そうさ。ナイスキャッチだったんだぜ?」
「見てなかった。」


少々肩を落とす彼に、ラミは慌てて声を掛ける。


「でもあれ覚えてるわ。えっと、階段掃除をしてる時に…」
「ハッカアメ!」
「そうっ!」


二人で思い出話に花を咲かせる。知らない間に、二人の思い出を作り上げていたのだと気付き、ラミは少し嬉しく感じる。


「意外だったよ、ラミがハッカアメお持ち帰りするなんて。」
「…好きなんだもん。」


照れながら言う彼女に胸をくすぐられる。可愛いな、と率直に感じる。ジョージとしてはラミは本当に可愛いと思っている。綺麗と言うよりは。周りは皆、彼女のことを綺麗だと言う。しかし周りはラミの可愛さを知らないのだと、優越感に浸る。


「ラミって、可愛いよな。」


彼女としてはもう言われ慣れているであろう言葉。しかしジョージは一度も言ったことなかったな、と気付き、伝えてみた。すると、彼女は今までにないほど顔を真っ赤にさせて、こっちを見ていた。


「あれ?照れてる?」


ラミはバシッとジョージの肩を叩いた。彼女としては何よりも嬉しい言葉だった。


「いやいや、ラミ言われ慣れてるでしょ。」
「…ジョージに言われるのが一番嬉しい。」


一瞬驚いたが、ジョージはすぐに破顔した。初めて言ってくれたとラミは喜んだが、彼女もジョージに大切な一言を一度も言ってないことに気付く。


「私、ジョージのこと好きよ。」


再び目を丸くして、それから俺も好きだよ、と言って力強くラミの頭を撫でた。自分らしくない、とラミは思いながらも、ジョージの手の下で、穏やかな笑みを見せていた。


「ジョージ、ありがとうっ!」




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