石造りの廊下には、かつんかつんという無機質な音が響いた。足音は二人分。しかし話し声はない。そして床に広がる二人の影は、真ん中辺りの細い一本の線で結ばれていた。


ジョージはラミの手に自分の手を絡ませ、促すように引っ張った。しかし、寮に近付くにつれてラミの足取りは重くなる。力が篭った彼女の手に何事かとジョージは振り返る。


「ラミ?どうしたの?」
「……アンジェリーナ達、怒ってるかもしれない。」


ついに立ち止まってしまった。寮を目前にした階段に、沈黙が走った。すぐ隣の壁に掛かった絵画の中の女性が心配そうに見ていた。


「どうして怒るんだ?」
「……あんなに、拒絶しちゃったのに。」


ここ何日か、ずっと扉越しに話し掛けてくれていたアンジェリーナとアリシア。たまにパトリシアも来てくれたりした。アンジェリーナの話では本当はフレッドとリーも心配して、来たがってた事も聞いた。ただ女子寮は男子は入れないから来れなかったのだ。


「今更、どんな顔して謝れば…」


頭にふわりと載った手。顔をあげると、ジョージは微笑んでいた。企んだような笑顔ではなく、優しい笑みだ。


「じゃあ一緒に謝ろう。」


彼の手には魔法が篭められている、とラミは思う。頭に載った手がラミの不安を軽減させたのだ。彼女はありがとう、と朗らかに微笑んだ。


絵の中の女性は、二人を邪魔しないように姿を消していた。

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