夕食時、本当に図書館には人影がなかった。いつも賑わっている本棚の間の机も、今は無造作に本が積まれているだけ。ラミは一つ一つ本棚の間を見ながら、通路を進んだ。キシキシと板を踏み鳴らす。何処にいるのだろう、と思った矢先。視界に赤毛が映った。


ジョージ…!


すぐに本棚の陰に隠れた。何でこんな所に、と考えた瞬間、感づいた。仕組まれた。今すぐ帰ってやる、と躍起になったが、すー、という穏やかな寝息が耳に入り思考を止めた。恐る恐る陰から顔を出すと、机に突っ伏して寝ていた。クィディッチの深紅のユニホームのまま。ラミは足を忍ばせてジョージに近寄った。


寝息により、肩が上下している。少し汚れたユニホーム。耳に掛かった赤毛。ラミは無意識のうちにジョージの髪に手を延ばしていた。指先が触れるか触れないかの瀬戸際で、ジョージの体が一瞬ピクリと動いた。ラミは手を引っ込め、すぐに立ち去ろうとした。しかし背中に声がかかる。


「ラミっ!」


椅子がガタッと揺れた。起きてしまった。ラミは焦って通路に飛び出したが。


「待てって!」


右の手首をジョージが掴んだ。しかしラミは振り払いもせず、振り返りもしない。背後にジョージの気配を感じ、沈黙の中心臓の高鳴りだけが耳に響いた。


「……」
「…ごめん、本当に。」


胸が擽られた。ジョージは本気で言ったのではないと、そう思っていたけど。


「セドリックを使ったのね!?最低よ!」


出てきたのは棘のある冷たい言葉だった。

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