ジョージの心からは後悔しか生まれなかった。自分でもあんなことを言うつもりはなかった。もう自分をごまかせない。こうなったのは、ただの嫉妬だ。セドリックに対する。


どうして、受け入れてやれなかったんだろう。


ラミは確かに友達だった。ならばセドリックと上手くいったからと言って、何かが変わるはずなかった。しかし変わってしまった。それはジョージがラミに対し、友達以上の想いを持ってしまったからだ。そのことさえもジョージは自覚していた。だからこそ、友達という平凡過ぎる関係から脱却したかった。ジョージの言葉にはその意味も篭められていたが、彼はそのことは口にしなかった。


「ジョージ・ウィーズリー!」


廊下を歩く彼の背中に、怒号が襲い掛かる。そして振り向くと同時に、胸倉を掴まれる。怒り心頭のセドリック・ディゴリーに。


「お前には何も言うことないぞ、セドリック。」
「俺になくても、ラミにはあるだろ!」


いつもクールなセドリックが声を荒げる姿に、周りはぽかんとする。ジョージも目の前の彼に目を丸くした。


「ラミに謝れよ!悪いと思ってるなら謝れ!」


するとジョージは顔を俯かせた。悔しくて仕方ない。結局ラミを良く知るのは、いつも隣にいた俺ではなく、セドリックじゃないのか、と。


「お前、ラミのこと好きなんだろ?なんであんなこと言ったんだ!」


その瞬間、ジョージもセドリックの胸倉に掴みかかった。


「嫌みのつもりか?自分がラミと付き合ってるからって…!」
「はあ?僕が?冗談よせよ。」
「は?じゃあ振ったのかよ!」
「ジョージ、意味が分からない。」


溜め息をつき、セドリックはジョージの制服から手を離した。すると脱力したようにジョージも手を離した。


「医務室で聞いた。ラミの告白。」


瞬間、頬に痛みが走った。飛ばされた視界。セドリックに殴られたと気付くと、ジョージはやり返そうと向かった。が、セドリックは再び声を荒げた。


「馬鹿か!今すぐ自分の気持ちを伝えて来い!そんなの逃げてるだけだ!」


ジョージは頬を手で押さえながらセドリックを睨んだ。しかし出てきたのは弱々しい声。


「…もう、会ってくれないかもしれない…」


はあ、と大きく溜め息をつき、セドリックはジョージの肩に手を載せた。


「僕に良い考えがある。それから、僕はラミと付き合ってなんかないからな。」

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