相手は弁当


入学してからの何週間は、部活の勧誘が多い。中学んときとなんも変わってへんわ。知らんうちに机やロッカーにメモ紙とかルーズリーフとかが入っとる。勝手に人様のロッカー開けんなや。と言いたいとこやけど、二、三年ときテニス部勧誘しまくったしな、人のこと言えん。


中二んときはオサムちゃんにまんまと騙されて、みんなで財前の勧誘しまくったなぁ。あの頃から白石も部長らしなった。懐かしい。


今日のホームルームはあれや、委員会決め。めんどいわぁ〜。俺は中学からオモ探一筋やし、さっきの休み時間に小春んとこ行ってオモ探誘っといたし。生徒会と迷っとったけど。


「ほんなら、次、オモシロ探索委い……一氏以外で」


俺がものすごい勢いで手を高く挙げたら、みんなこっち見た。笑っとるやつもおる。なんやねん。早苗と目が合った。めっさ余裕そうにニヤリ笑っとる。けど俺は真剣な表情を崩さずポーカーフェイス。するとまた笑った早苗になんや腹立って目をそらした。したら次は弥栄と目が合った。なんや文句あるんかいって睨みそうになった。せやけどその前に目ぇそらされた。前を向いて後ろの喧騒なんて無視、みたいで。…なんやねん、ほんま。


昼休み。俺は1組まで小春を迎えに行き、肩を組みながら屋上に向かった。後ろからついて来た白石と謙也がなんや言うとるけど無視。


「テニスしたいわぁ」


白石の呟きに謙也がめっちゃ頷いた。小春も話に参加。


「したいなぁ!」
「俺ら今仮入期間やしな。」


部活は入学式の次の日からあるんやけど、学校始まって何日間は仮入部期間言うて、色んな部活に見学行けっちゅーことや。せやけど俺らはテニス部以外興味ないし、まぁ文化部の方は各々決めとるようやけど。テニス部のミーティングもまだやし、本調子やない。本格的なテニスはまだ俺たちには出来ひんのや。


「謙也は放送委員会入ったん?」
「おん。中学からやっとるしな。俺のスピードラジオまた聞けるで?」
「ラジオ言うたってただのお昼の放送やろ。ちゅーか早口過ぎて誰も聞き取れんわ。」
「えっ!う嘘やろ!おもろかったっちゅー感想めっさもろたで。」「嘘や。」


しれっと言う俺に小春は笑ってくれたんやけど謙也は不服そう。そこで白石の早苗呼ぶ声がして謙也は会話から離脱。


「ユウくん、アタシもオモ探入ったで〜」
「ほんま?よっしゃ!生徒会はえぇんか?渋っとったやろ」
「悩んだんやけどなぁ〜。生徒会は来年からでもえぇかな思て。ユウくん、今年は一緒に委員会出来るなぁ」
「小春ぅぅ」


気付くと俺と白石の間に早苗、小春と謙也の間に弥栄が座っとった。やけど俺と小春は二人で盛り上がっとったし、三人も何故か財前の話で盛り上がっとったから、弥栄は一人で寂しげに弁当食っとった。俺にはどないも出来ひんのやけど。


―――――――――――――


2012.01.28


[ 6/57 ]

[] []