特別な女と大嫌いな女


女なんてもんはほんまに大嫌いで。中二の時は俺も人並みに恋愛しとったし、テニス部のやつらとアホやってる時が一番楽しゅうて、普通に青春しとった。せやけど楽しい時間は永遠やない。


女は嫌いやねん。一氏くんのモノマネ最高やわぁとか言いつつ、金色くんのことマジなん?きしょいとか。ほんま意味分からへん。俺かて当時は早苗が好きで。マジなわけないやろネタやネタ!まぁ、早苗が白石の彼女になった時点でどうでもようなったけど。もうマジでええで。ホモでええわ。小春おればええ。せやから、高校でも同じクラス狙っとったのに。


「アタシはー…あった。1組やねぇ。」


な、なんでやねん!遠い。遠すぎるで小春。俺一年間我慢できんねやろ。無理や。しかも白石同じクラス?こいつ、俺から早苗まで奪っといて次は小春か。許されへんな。いや、ちゃうか。早苗は一度も俺のになったことないわ。


「ユウジも4組や。弥栄さんと同じやん。」


全ッ然嬉しくないねん。むしろ代われや。謙也が隣で俺3組や〜ぼっちや〜とうなだれているのを無視して、俺はもう一度掲示板に目をやった。なんでやねん。なんでまた、早苗と同じクラスなん?古傷が疼くっちゅーんはこないことか。なんて冷静に考えとると、小春が俺に向き直った。


「ユウくん舞ちゃんのこと頼むわぁ」


意味分からへんわ、ほんまに。俺女嫌いやし、うじ虫みたいな女なんて勘弁。何となく、こいつのせいで小春が離れてく気がして、ほんまに気分悪かった。大嫌いや、こいつ。俺の顔見てびくびくしよって。腹立つ。


「こないうじうじした女は一番嫌いや。」
「ちょっ!?ユウジ何言うとんねん!」


名前なんやったっけ。忘れた。この女は今まで俺を見て怯えとったくせに、目を丸くしとった。いや、普通こんなん言われたら傷付くやろ。泣き出す思ったし。せやけど、なに普通に驚いてんねや、こいつ。調子狂うわ。がみがみなんや言うてる謙也を無視して、俺は先に校舎に入った。


「ユウジ、おはよう!」


下駄箱で靴を履き換えとると、背中に声を掛けられた。俺より全然小さい早苗は、早々と俺を抜かして、今履いてきたローファーを自分の靴箱に入れ、上履きを取り出した。


「今年も同じクラスやね!よろしゅう!」
「お、おん。」
「ほな、あたし白石に用あるんやわぁ。また昼に!」


嵐の如く過ぎ去った早苗。白石、まだ外におるで。言う前に行ってもうた。諦めたはずやったのにな。俺キモいわ、ほんま。俺の隣の隣の靴箱に貼ってある折原早苗っちゅー名札シールを見て、なんや切なくなった。女は大嫌い。せやけど、早苗だけは特別やった。


―――――――――――――


ユウジバージョン

2012.01.24


[ 2/57 ]

[] []