あーあ。
休み時間に何となく小春に会いたなって、1組に向かった。小春小春小春小春小春小春会いたい小春小春…
「ユウジっ!」
誰や思ってぐるんと首を回して後ろを見ると、ケバい女ども。こいつら、あれや。自分で言うのもアレやけど、自称一氏ファンクラブ。きしょい。四天宝寺は氷帝みたいに統制されてへんから、ファンクラブとかいうもんはない。一部の女子から白石とか財前とかが人気あって(ケンヤもまぁまぁ)、ただそれだけ。四天宝寺にはやっぱり、笑い≫恋っちゅー関係式があるわけで、氷帝みたいにファンクラブ作ってキャーキャーせえへん。そん中で勝手にファンクラブ(実際そんなもんは存在せえへんやで)とかほざいとるこいつら、うざい。ついでに、馴れ馴れしいんじゃハゲ。
「今日のライブがんばってね!応援し、」
「いらん。」
あーイライラ。精神安定剤小春のもとへ急ご。女ども無視して1組に走った。
「小春ううぅぅぅ〜!」
「あ〜んユウくん!会いたかったわあ!」
ごっつ勢いで胸に飛び込むと、さすが小春や、俺を受け入れてくれる。やっぱ最高やな、俺の愛しの…
「なぁ、ユウジ」
「なんじゃ白石ィ!見て分からんのか?今俺は一時間振りの小春とスキンシップを楽しんどんねん!邪魔すなあぁ!」
「謙也にも聞いたんやけどな?」
「オイ白石無視か?無視なんか?話噛み合っとらんで?」
「俺らはやっぱり、弥栄さんにマネージャー頼みたい。」
言葉に詰まった。やって、まさかその話なんて。っちゅーか昨日の時点で決まったんやないの?弥栄、やるって言ったやん。
「俺カンケーあらへんわ。」
「マネ頼むなら、全員一致がええねん。早苗かて、ユウジが嫌ならしゃあないって言っとったし。」
シンと黙り込む俺ら三人。横で小春も期待込めてこっち見とるし、白石も同じようなもん。え?ちゅーか俺に決定権あるん?全員一致、か。俺にかかっとるんか。
「…早苗がええんなら、べつにええんやない?」
それしか言えへん。やって、マネージャーやるったって、実際問題俺には関係あらへんし、早苗がしたいようにすべきやろ。俺は、べつに…
「ユウくんはどう思うて聞いてんやで?」
「……」
「舞ちゃんのこと、やっぱり嫌い?」
嫌い嫌い嫌い嫌い。あいつに対する感情はこれ以外ない。けど、さっきのケバい女どもとかと比べたって、どっちが嫌いっちゅーのはもうはっきりしとるし。そんなんより、嫌いの種類がちゃうんやな。こんなん絶対言われへんけど、弥栄には、もっともっと自信持ってほしい。
変わりたい、って言ったから。
「俺は……」
変わりたいなら、俺が応援したる。
「…俺は、弥栄にやってほしい。」
悔しいな。嫌いなはずなのに。『わたし、変わりたい』って泣きそうになりながらもちゃんと言ったあいつの顔が脳裏に浮かんだ。マネージャーやれば嫌でも先輩たちと関わり持つし、人見知りなんやなくなるやろ。そんであんなぐずぐずした性格直れば、もう少しは仲良うできるかもしれんしな。
白石と小春は俺がそう言うんを分かっとったように、嬉しそうに頷いた。
―――――――――――――
もうすぐバレンタインっすね
2012.02.12
[ 16/57 ][←] [→]