なんでおんねん


担当ん先生に呼び出しくらって弥栄と一緒に教員室。ほんま腹立つわ、なんで俺やねん。って俺がサボったからか。面倒やなぁ。こんなんならサボらなよかったわ。失敗。せやけど、なんや俺の後ろでにこにこしとる弥栄見ると、なんでかイライラは治まった。ちゅーかなんで少し嬉しそうなんや。説教、そんなに好きなんやろか。キモ


「はぁっ!?オサムちゃん!」



びっくりし過ぎて腰抜けるか思たわ。ほんま。よっ、なんて軽く片手を上げる元顧問に殺意が芽生えた。ついこないだ、引退式やら卒業式やらで感動的なお言葉(謙也なんて泣いとったで)をくれた元顧問は平然とした顔で四天宝寺高等学校の教員室におる。もう一度言う。元顧問や、元。


「一氏はほんまえぇ子やったのになぁ。あの頃の一氏は何処へ」
「ちょ、え、なんでオサムちゃんおんの。中学教師やろ?」
「あんなぁ、感動の再会やろ?そない言い方あかんわ。」
「あんたがここおる方があかんわ。」
「ちゅーか、なに俺の授業サボっとんねん。コレか。このかいらしい子は一氏のコレか。」


おー無視か。んで弥栄指差してニヤニヤしとる。ほんま変わってへんわ。や、最後に会った卒業式から一ヶ月しか経っとらんし、当然か。ちゅーか、小指立てる感じがうっとい。小指でカノジョを表すん、いつの時代やねん。さすがオサムちゃんやわぁ。で、弥栄はあからさまに慌てんでほしい。安心しぃ、こっちから願い下げや。


「ちゅーか、なんでオサムちゃんおるんすか。」
「あぁ、転勤や!転勤!」
「……アホや」


世の中おかしなことばかりや。とりあえず、この元顧問シバきたい。


「で、何の用やねん。」
「おぉ。高校テニス部はマネージャー一人増やしたいんやけど。誰でもえぇからみんなで相談して決めてや。」


オサムちゃんの視線が、ちらりと隣で俯いとる弥栄の方を向いた。あぁ、そういうことか。弥栄をマネージャーにしろっちゅーことか。絶対、


「……嫌やで。」


嫌や。今まで何回マネージャー増やそうとして失敗したんや。こいつも所詮、同じやろ。最後はきっと早苗を捨てるで。早苗を捨てへんのは、テニス部俺たちだけや。


「白石は賛成やったんやけどなぁ。」
「けど俺は反対や。」
「…そか。まぁ、そういうことやから、一週間以内に決めぇや。」


いつもと同じやった。オサムちゃんはいつもと何ら変わりはなく、またテニス部の顧問してくれるんやって、安心した。けど、マネージャーの話はべつ。早苗以外、いらんわ。


―――――――――――――


2012.01.30


[ 9/57 ]

[] []