何言うとんの、あいつ


ありえへん。俺は頭抱え込んでぶつぶつ何やら唱えていたらしい。寮で同室の子猫さんと坊が心配そうに声掛けてくれはった。けどそれどころやない。あんなん、告白したようなもんやないか。昼はまだごまかせようにも、もう手遅れやわ。


「元気出してください、志摩さん。」
「そうやぞ。明日また話せばええやろ。」
「話すて何を?」
「ええ加減告白しろ言うとんのや。」


坊て時々無茶苦茶言いはりますよね。あ、時々やないか。告白て、したようなもんですよ、あれ。これ以上俺にどないしろ言うんや。


「名前、好きな男おりますよ。」
「関係あらへんやろ。」
「坊の言う通りです。志摩さん、頑張ってください!」


…あかん。元気出えへん。テンションも上がらへん。もう絶望的やわ。


次の日も、相も変わらず名前とは口きかへんかった。その次の日も。何度か話し掛けに行こうとしたんやけど、目が合うとすぐ逃げられる。そないあからさまに避けんでもええやないか。せやけど絶望的なんは更に絶望的になった。名前の好きな男が告白したいう噂が回っとる。名前は大丈夫かと心配しとったけど、杞憂やったらしい。


あいつが告白したんは名前やった。両想いやったん、あいつら。なんや、良かったやないか。切ない気いもするけど、いつものことや。おめでとう言わなあかん。昼休み、坊が名前がおらん言いはるから、探しに来たところ。いつもの中庭の噴水に、名前とあの男がおった。こちらからは頭しか見えんけど。苦しゅうなる胸に気付かへん振りをしながら、背後に近寄ると、丁度その男から俺の名前が飛び出た。


「そんなに志摩が大事?」


ぴたりと足が止まり、思わず噴水の陰に隠れた。なんでこないタイミングで俺の名前出すんやアホ!更に気まずくなるに決まっとるやろ!


「俺と、付き合ってくれないの?」


なんや名前、まだオッケーしとらんかったのか。早よ言えばええのに。あたしも好き、って…。


「…ごめん、無理。」


ええ!?何言うとるん、あいつ!アホか!せっかく両想いやって分かったのに。何がしたいんや…。


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