証拠とプリン


祓魔師としての悪魔祓いの任務を終え、正十字マーケットのビニール袋を片手に、帰路についた。今日も疲れたなあ、と溜め息をつきながらも、助けた子供の笑顔を思い出すと、口元が緩んだ。


「名前ー?何にやけてんだ?」


突然の声にビクリと肩を揺らす。隣を見ればそこには同僚であり上司でもあるシュラさんがいた。いつもの如く、際どい格好をしている。


「シュラさん!」
「なんだ、今からあの年下彼氏とデートなのかよ。だからにやけてたのか、納得。」


勝手に話を進めるシュラさん。そして何故か勝手に納得している。


「だから、付き合ってませんて。」
「んにゃー、ほんならこりゃなんだ?」


と言ってシュラさんは私の右肩を指差した。私が廉造と付き合っていることは一応秘密だ。塾とは言えど、教える側と教わる側。罪悪感を感じてならないのだ。だから一応口では嘘をつく。シュラさんは多分もう気付いているだろう。確信を持って尋ねてくるのだが、如何せん、私は素直に頷くことは出来ない。


「これって何ですか?」
「この、肩についてるピンクの髪だよ。」


そう言ってシュラさんは私の肩に手を伸ばし、そして私に突き出した。おそらく今私は真っ青だろう。ごまかしようがない。シュラさんの指は、私の服から取ったピンクの髪を摘んでいた。


「祓魔師って制服黒くて大変だにゃ〜。」


にやにやしながらピンクの髪を私に渡した。明らかに廉造の物である。油断した、と内心舌打ちをかましたが、それよりもどうにかしてシュラさんの気を紛らわさなければ。そこでふとシュラさんが手にするビニール袋に目が行った。


「あ、シュラさんも買い物だったんですか?あんまりお酒ばっかり呑んじゃダメですよ?」
「お前もあんまり少年とイチャコラすんなよ?」
「だから、付き合ってないですってば。」
「ごまかさなくていいぞ。別に悪いことしてんじゃねぇんだし。」
「え?」
「誰が誰を好きになろうと本人の自由だろ?周りは関係ない。」
「シュラさん…。」


彼女がそう言ってくれて、本当に嬉しかった。誰も認めてはくれないと思っていたから。シュラさんの言葉を胸に、私は寮に戻った。のだが。


「名前、おかえり〜」


はい、またこいつは期待を裏切らない。こちとら任務帰りで疲れてんのに。


「あ、お土産?よっしゃ!」


廉造は部屋から出てくるなり、私の持っていた袋を引ったくった。そして部屋に戻って行く。悔しくなって、袋を取り返そうと廉造を追ったが、既にテーブルの上で袋を漁っていた。


「ちょっと!勝手に開けないでよ!」
「お、プリンや。美味そ。」
「廉造の分はないから。」
「何言うとんの。ちゃんと二個買って来とるやん。」
「それ、廉造のじゃない。後で二個食べようと思ったの!」


抗議する私を無視して、廉造はプリンの蓋を開けた。


「ほんま、素直やないんやから。」


全くその通りだ。任務帰りにスーパーに寄り、自分にご褒美を買ったつもりが、どうせ廉造もまた勝手に部屋入ってるのだろうと推測し、二人分買ってきた辺りが重症だと思う。私は珍しく否定の言葉を出さず、廉造の隣に座り、もう一つのプリンを開けた。


―――


シュラさんの言葉が分からない!
そして正十字マーケットだっけ?
原作がないので忘れました

2011.09.11


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