それは妥協とは言わない


常識的に考えて、おかしい所はたくさんある。まあ彼に常識を求めるのは無理があるのだが。


祓魔師の任務を終え、疲れた身体を引きずって自室に戻った。ベッドの上で寛ぐ廉造を見て、少しは驚いたが、まだ許せる。一応恋人なのだから。しかし、開いている雑誌は許せない。そもそも彼女の部屋で、そんな年齢制限がつきそうな雑誌を堂々と読むなんて。しかも私のベッド占領して。


「あ、名前、おかえり〜」


雑誌から顔を上げ、廉造はひらひらと手を振った。そこで私の怒りメーターがぐんと上がる。


「何してんの、早く帰って。」


生憎、私の部屋は講師棟の一人部屋だから周りにばれることはないのだが。とりあえず疲れてるし、帰ってほしい。


「いや〜、今月のが出たんで、早速買ってもうた。」


そこでやっと身体を起こし、ふにゃりと顔を崩した笑顔と共に、私に雑誌の表紙を見せた。見慣れたタイトルが見える。私は盛大な溜め息をついた。


「じゃあそれと一緒に全部持って帰って。」


私の本棚には、祓魔師には必要不可欠な知識が詰まった本が並んでいる。しかしその一角で、背表紙をこちらに見せるふざけたタイトル。


「せやから、俺は名前とちゃうて寮なんやって。俺の神聖なる時間を坊と子猫さんは揃って邪魔しよるさかい。コレの隠し場所には名前の部屋が調度ええ。」


友達に色々言われるのが嫌だから彼女の部屋にエロ本を隠す、なんて男がどこにいるのだろう。廉造は斬新すぎる。


「私はイヤ。早く帰れ!」
「え〜!今日泊まってくるて坊に言ってもうたで。」


私の怒りメーターは爆発だ。なんでこんなに自分勝手なんだ。泊まる、と言ったら廉造は魔神らしくしっかりと手を出してくる。別に嫌ではない、恋人なんだから。でも今日は疲れているのだ。そういうことをする元気は私にはない。


「……私今日疲れてるの。勉強だけしてればいい学生とは違うのよ。」
「勉強かて疲れるで。」
「あんたはろくすっぽやってないじゃない!」
「……分かった。今日は添い寝で妥協するえ。」


なんだ、その真剣な顔。柄にもなく、心臓が高鳴った。しかも、そこ妥協するところじゃないし。


まあ結局、嬉しそうにする廉造には敵わないのが実状。


―――


2011.09.09


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