珍しく私のクラスに子猫丸が現れたかと思ったら、昼食一緒にどうですか、と誘われた。珍しい子猫丸の誘いに嬉しくなって、何も考えずに返事をした。


二人で廊下を歩くこの姿は、周りから見れば異様なのか。色々見られた。そして何故か志摩に、にこやかな笑顔を貰った。なんだかなあ、と思いながら隣の子猫丸と他愛ない会話を交わしていたのだが。後ろからドタドタと廊下を走る音がして、その犯人は私と子猫丸の前に立ち塞がった。


「なんか用ですか、先輩。」
「お前今日は一緒に食べられないとか言ってて、なんでチビスケといるんだよ!」
「チビスケじゃないです、子猫丸です。先輩間違えないでくださいね。」


いつも昼食時になると勝手について来るから、せっかく今日は無理だと告げてあげたのに、先輩は怒っている模様。そして子猫丸の前で身長の話をするな。二回目だぞ。


「行こう、子猫丸。」
「ちょーっと待てって!」


子猫丸の腕を掴んで、先輩の隣を通り過ぎようとした。しかし彼は再び私の前に身を置いた。せっかくの子猫丸との昼休みを、邪魔しないでほしい。


「先輩しつこいですよ。そもそも一緒に食べる約束とかしてませんから。いつもいつも、なんでそんなに構って来るんですか!」
「そんなん、お前のこと好きだからに決まってんだろ!」


覚悟はしていたつもりだった。もしかしたら、とか、でもまさか先輩が、とか色々考えた結果、先輩はきっと暇つぶしに私を使っているのだろうという結論に達した。でも違ったらしい。子猫丸が目を見開いていた。そして、何と言うか、淋しげな表情。子猫丸にそんな表情させるな。しかも、ここ廊下。


「こんなチビスケより俺の方が包容力あるぜ?」
「だからチビスケって言わないでください!」


思わず睨み上げた。先輩、本当に空気読めないな。当の本人である子猫丸は私の後ろでいづらそうにしていた。


「名前さん、僕用事思い出しました。」


子猫丸の腕が離れて行った。


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2011.09.06


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