「好きなんです。」


友達だと思っていた人に告白をされた。何の脈絡もない突然のことに、私は絶句。顔を真っ赤にさせながら、口をぱくぱくさせ、慌てふためいていた。告白の言葉は、京都人らしく語尾が上がっていた。


「え?あれ?…え?」


目の前の坊主だって顔を赤くしている。それにしても似合わない。子猫丸に色恋沙汰は本当に似合わない。しかも子猫丸は、確実に弟キャラだ。


「名前さんのこと、好きです。」


何度も言わなくても分かる!聞こえてる!確かに私も好きだ、子猫丸のこと。多分塾でも一番仲良い。子猫丸からの告白は意外すぎる。そもそも子猫丸でも恋をするのか、と変なことを考えていた。


好き、と言ってもそれは勿論友達としてである。果たして私は子猫丸のこと、男として見たことあるのだろうか。いや、ない。一瞬たりとも、ない。だからこれが初めてだ。こんなにも心臓が早鐘を打っている。子猫丸相手に緊張するのも、初めてだ。


身長は私より少し大きいくらい。確か5cmも差はなかったはずだ。ヒールを履けば途端に子猫丸の方が私を見上げる形になる。こんな子を男として見れますか?だって、子猫丸と手を繋いだり、キスしたり出来る?おかしい。想像が出来ない。どうして子猫丸はこんなに色恋沙汰に似合わないのだろう。逆に可哀相だ。


なんて考えていた時。


「名前、何してんだ?」


バイトの先輩がそこにいた。バイト先が同じで、正十字学園の先輩でもある。結構仲は良い。バイトの前には迎えに来てくれたりする。今日もそうだ。


何って、告白されてるんですよ、見て分かりませんか。近寄ってきた先輩は私と子猫丸を見比べた。子猫丸との身長差が目につく。


「なんだ、弟か?」
「違います。友達です。」


失礼な先輩だ。子猫丸は酷く悲しげな表情を見せた。本当に空気の読めない先輩だな、と若干呆れながら、私は慌てて先輩の背中を押した。


「ま、また明日ね、子猫丸。ほら先輩早くバイト行きますよ!」
「ばっ、押すなよ。」


ぐいぐいと背中を押してその場を立ち去る。


「お前チビ専なのか?」


そんな大きな声で言うなよ!子猫丸に聞こえちゃうだろ!まだ後ろにいるのだから、きっと聞こえちゃっただろうな、と思いながら、背中には射るような視線を感じていた。


―――


2011.09.04


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