ツリ目が羨ましいんや


二人で昼飯なんて久しぶりやわ。いつも坊と子猫さんおったから二人きりなるのはそうそうない。やけどこいつときたら、そのクラスのイケメンくんの話しかないんか。って、そもそもイケメン好きの名前はなんで俺に惚れないんか。あ、タレ目やからか。いや、それは違おてるで。やって名前、初恋は柔兄やった。せや、俺にもチャンスあるんやね。


「名前好きなんツリ目やのに、なんで柔兄に惚れたん?」
「えー、何いきなり。」
「柔兄、短気やし。それにタレ目やん。」
「だって柔造さん、凄い優しいじゃない。」
「俺かて優しいやろ。」


一瞬名前の動きが止まはった。なんや、おかしなこと言うたか。


「何言ってんの、志摩。あんたはあたしの親友じゃない。その優しさには感謝してるけど、惚れたりなんかしないよ。安心して。」


安心できるか!アホかこいつ。アホや。なんでずっと隣おんのに俺の気持ち気付かないん?アホやからか。こんなに頭ん中でアホアホ言っとることバレたら、怒鳴り散らすんやろな。少し想像できて笑える。


「何笑ってんの、気持ち悪い。」
「俺はいつでもにこやかや。」
「にこやかじゃなくてニヤニヤしてる。気持ち悪い。」
「名前少し酷ない?」


半泣きで言うとそっぽ向かれた。なんでや!こっち見いや。もうええよ。拗ねてやる。俺も反対側に顔を背けると、頬を引っ張られた。


「いた!」
「志摩には本当に感謝してるよ。ありがとう。」


そう言って笑うんや。いつもそう。その笑顔を俺だけのものに出来たらええのに。切なさが込み上げる。俺は乙女か!


いい加減気付いたってや。名前には俺らしか、俺しかいないんや。どうせ今の好きな男と付きおうても、すぐに別れんのに。俺たちがおるからって言うて、別れんのに。何度繰り返せば気が済むんか。やっぱりこいつアホや。しょうもない奴や。ま、俺も同類やけどな。他の女の子好きになれたらええのにな。ふらふらしとっても、気付けば名前に戻っとる。ほんま、アホやな、俺も。


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