二人は誰から見ても、両想いだった。女好きな志摩は、名前に対しては誠実に関わっていたし、名前も満更ではないのか、嬉しそうに志摩の隣にいた。学校ではクラスが違うため、会うことはあまりなかったが、塾では常に一緒にいた。授業の後に二人で勉強したり、寮に帰る時も二人きり。どこからどう見ても両想いなのに、全く進展しない二人の関係に、塾の仲間はヤキモキしていた。


「早く付き合っちゃえばいいじゃない。ぐずぐずしてると誰かに取られちゃうわよ。」


出雲は呆れながらも助言を与えた。塾では煙たがれている志摩も、学校では一部の女子からは人気があったりする。名前もそれは知っていたが、今のまま側にいらればいい、と甘い考えを持っていた。しかしそれは儚く打ち砕かれる。


「名前ちゃーん、悪魔学の宿題貸してくれへん?」


珍しく名前のクラスにやって来た志摩。彼女は嬉しそうに宿題を差し出す。その隣には、彼女の親友。


「おはよう、志摩くん。」
「おはようさん。」


にこにこと挨拶を交わす志摩と親友に、名前は嫌な予感がした。


「ほな、宿題ありがとうな。」


すぐに帰って行ってしまった志摩を、後ろ姿が見えなくなるまで見つめた。それは名前だけではなかった。


「…名前ってさ、志摩くんのこと好きなの?」


突然の親友の問い掛けにびくりと肩を揺らした。勿論好きだ。友達として、一人の男の子として、名前は志摩が大好きだった。しかし、それを素直に言うことは出来なかった。だから、名前はこの時この瞬間の自分を恨むことになる。


「……好きじゃないよ。」
「本当っ?良かった!私ね、志摩くんのこと好きなんだ。」


何もかもが、崩れ落ちていく。


―――


志摩くん大好き

2011.09.01


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