韃靼人は恋をする


祓魔師やら悪魔やら、おどろおどろしい物とは何の関係もない苗字家の神社。その神社の小学生の娘でも、青い夜のことは知っていた。近所の由緒ある寺が、悪魔に襲われたという神話じみた噂は、名前の耳にも届いていたのだ。祟り寺の子。それが桜の木の下で出会った勝呂竜士だ。


全く毛嫌いをしない名前はどんどん竜士との仲を深め、常に行動を共にするようになっていた。小学校は違ったものの、中学からは同じ学校に通い、竜士の寺の門徒だと言う志摩廉造、三輪子猫丸とも仲良くなった。所謂幼なじみ。しかしその幼なじみという幼稚な関係もついに終わりを告げた。


「ずっと好きやった。」


それはいつものように竜士が神社に遊びに来た時だ。二人で桜の木の下に来た時、竜士は真剣な表情を見せた。しかし名前は笑った。真剣な竜士は珍しいらしい。


「竜士は気持ち悪いほどロマンチストやね!」
「なっ!気持ち悪いて…」
「私かて、大好きやで。」


出会った場所を告白の場所にする竜士が可愛いと思ったのだ。気持ち悪いと言われ、ショックを受ける竜士に、名前は相変わらず普通に自分の想いを告げた。竜士は目の前で笑顔を見せる彼女に、顔を朱に染め、照れを見せた。


「お前、ずっと俺ん側におれよ。」
「おるよ。当たり前やろ?」


二人は微笑み合う。小学生の頃から、随分成長した二人。同じ高さの目線は、今では名前が見上げるほど。竜士も昔に比べ、名前に出会ってから表情が柔らかくなった。


「俺が祓魔師なって、名前んこと護るさかい。」
「竜士の夢は、サタンを倒すことやろ?私のことはどうでも」
「良い訳ないやろ。どっちも譲られへん、俺の夢や。」


サタンを倒すという子供じみた夢は、今でも竜士の中にある。皆が笑うその夢を、名前だけは馬鹿にしなかった。笑わなかった。隣で本気で応援してくれる彼女のためにも、祓魔師にならなければならなかった。


「竜士が大好き。」


唐突すぎる発言に、竜士は意表を突かれた。照れ臭くなって、微笑む名前から視線をそらした。だから気付かなかったのだ。名前の悲しげな微笑みに。


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2011.08.28


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