ねこねこ


苗字名前は子猫丸の二歳年上で、女性の身でありながら竜騎士の称号を持つ中二級祓魔師である。年の近い廉造とは仲も良く、それと同時に坊や子猫丸とも一緒にいた訳であり、彼らのことを兄弟のように慕っている。また逆も然り。しかし子猫丸の彼女に抱く感情は尊敬を通り越し、恋慕に変わっていた。小さな頃からずっと、つまり初恋という訳で。近所の優しい年上に初恋を捧げるというのは王道であるが、子猫丸は今だに昔と同じ感情を持っていた。そしていつまでも子供扱いをする彼女に、切ない感情をも胸に抱いていた。


「名前さん、ええ加減返してください。」


名前は縁側に寝そべり、ゆらゆらと猫じゃらしを揺らしていた。その前に子猫丸が立っている。相変わらずにこにこしながら、至極楽しそうである。


「ねこねこ本当に猫みたい。」


眼鏡の前で緑が揺れた。チリンと小さな鈴の音も聞こえる。子猫丸は名前に遊ばれていると気付くと、表情を曇らせた。しかし本音は隠したまま。


「…今なら猫の気持ち、分かる気がします。」
「良かったじゃん。ねこねこ猫大好きだもんね?」


あれ、ねこねこねこ?ねこねここねこ?ねこ猫?と自分の発言に混乱している名前に子猫丸は笑みを浮かべた。そして彼女の隣に腰を下ろす。すると名前は体を起こし、また眼鏡の前に猫じゃらしを出してきた。


「機嫌直してよ、子猫丸。」


いきなり名前で呼ぶなんて卑怯だ、と内心悪態をつきながら、彼女には敵わないと子猫丸は思った。


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