親友はお弁当
入学してからの何週間は、部活の勧誘が多い。知らないうちに机やロッカーにメモ紙とかルーズリーフとかが入っている。たぶん女の先輩たちが書いた勧誘のお手紙。中には仏閣愛好部とかアップリケ部とかまで入っていて少しびっくりした。
黒板に羅列した委員会の名前。今日のホームルームでは委員会を決めるらしい。必ず入らなきゃいけないそうです。四天宝寺って結構強制多いんだなぁ。部活も二つ兼部だし。まだ決めてないけど。とりあえず、どれにしようと頭をひねるが。やっぱり無難に図書委員会がいい。中学の頃もやってたし。あれも押し付けだったけど、でも委員会は自分の意志で三年間続けられた。
先程学級委員に決められた子がだるそうに図書委員会やりたい人ー、と言ったので恐る恐る手を挙げれば、誰とも被らなかった。あぁ、やっぱりわたしって地味。
「ほんなら、次、オモシロ探索委い……一氏以外で」
一氏くんがものすごい勢いで手を高く挙げたから、わたしはびっくりして後ろを振り向いた。あまりにも真剣な表情だったから、見入ってしまい、目が合った。一瞬で前を向いて、そらしたけど。隣の席の女の子たちが、出たで一氏の委員会魂、とか言って笑っているのが聞こえた。オモシロ探索委員会って何するんだろう。後で小春ちゃんに聞いてみよ。そんなふうに考えているともう最後。早苗ちゃんは一番最後に放送委員会に手を挙げていた。
「アタシもオモ探入ったで〜」
お昼休み。今日もお弁当持参で早苗ちゃんと一緒に向かった屋上ではすでに小春ちゃんと一氏くんが委員会の話をしていた。オモ探って略すんだぁ、と内心感心していた。黙って二人の会話を聞いていたけど、結局委員会の内容は分からなかった。
「舞ちゃんは何入ったん?」
今日は左隣りに座った忍足くんが話し掛けてくれた。わたしは急いで口の中のものを飲み込み、返事をした。
「とと図書、委員会です!」
「あはは、めっちゃ吃っとる。図書委員会かぁ〜…あ〜やなやつ思い出した」
やなやつ?、と尋ねる前に忍足くんのわたしとは逆側の隣にいる白石くんが話に入ってきて、財前かぁ〜、とか、元気にやっとるやろか、とか、そうこうする間に早苗ちゃんまで参加してきて内輪ネタ満載過ぎて分からなかったから会話から離脱。ザイゼンってどなただろう、とか思って小春ちゃんの方を見たけど、いまだに楽しそうに一氏くんと喋ってたから諦めた。あ、わたし諦めてばっかりだなぁ。
(挫折が多いのも悩みどころだなぁ…)
右側では忍足くんと白石くんと早苗ちゃん、左側では小春ちゃんと一氏くんがそれぞれ楽しそうに話していて、わたしの相手をしてくれるのはお弁当だけだった。
(べつに…いいけどさっ)
それにしても、早苗ちゃんと白石くん、近いなぁ。
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オモシロ探索委員会をオモ探って略すの、どうよ?
ちょっと高校生っぽいでしょ
2012.01.27
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