初・LIVE!


唖然。この間入学式を行った体育館は、何かのアイドルのライブかと思うくらい、人、人、人。あ、でも一応ライブか。舞台の前にはパイプ椅子がずらりと並んでいて空席はない。壁際にも人が並んでいる。立ち見か。しかも、学生以外の服装だってある。一氏くん、すごい人気なんだなぁ、なんてのんきなことを考えてると、早苗ちゃんが手を引っ張った。


「人多いねん。迷子ならんようにな。」


人の間を無理矢理抜けて、わたしを引っ張る早苗ちゃん。そこで、体育館の舞台から一番離れた後方の壁に、一際目立つ集団を見つけた。早苗ちゃんはそこに向かっているよう。


「遅かったな、早苗。けどまだ始まっとらんし、よかったな。」
「うん、まぁ、いろいろ。」


ようやく早苗ちゃんは手を離し、白石くんの隣で壁に寄り掛かった。わたしは更にその隣で同じように寄り掛かった。身長は大きくはないけど、前方は椅子だし舞台の上はちゃんと見えそう。初めての経験にどきどきしていると、隣に小春ちゃんが来た。


「舞ちゃんも来たんやねぇ〜!」
「う、うん!一氏くんが来てもいいって!」
「ユウくんが?あ〜せやから来るの遅かったんかな。控室でな、珍しく遅刻やったのに今日は絶好調やーって叫んどったん。」


くすくす笑いながら小春ちゃんは言ったけど、ちょっと話が飛びすぎててよく分からなかった。その時、体育館の証明が消え、舞台だけが明るく光った。遅いぞ一氏ー!とかいろいろヤジを飛ばされていた。


「待たせたな、おまえら!今日も気が済むまで、俺様の美技に酔いなっ!」


キャーっと沸き上がる歓声。突然のことにぎょっとして、思わず耳をふさいだ。なになになに?両隣の小春ちゃんと早苗ちゃんは、さすがユウくんやわー、とか、似てるわー、って笑っていたけど。


 分 か ら な い !


中学のとき、俗世間から離れて暮らしていたから流行りの物とか全然分からなくて。べつに分からなくてもデメリットはなかったし困らなかった。けど、そのせいで一氏くんのネタが分からないのは、すごく寂しい。


「高校入って初のモノマネLIVE、どうや!?」


サイコー!、とパイプ椅子に座っている女の子たちが口を揃えて叫んだ。もしかして、ファン、とかなのかな。騒がしい体育館の中で浮き彫りになるわたし。やっぱり、この世界はわたしには合っていないのかもしれない。


「ほな、いつものコーナーや!浪速のスピスタピアスのモノマネ漫才!ピアスの方は高校にはおらへんけど、知らんやつおらへんなー!?」


舞台の上でノリノリな一氏くんは、すごく輝いて見えた。でも、わたしにはその、すぴすたぴあす?が分からない。また女の子たちが、おらへんー!って叫んでいた。ここに、いるんだけど。こんなところでも内輪ネタ満載なのか。でも、我慢だ。分からないけど、とりあえず笑ってればいいんじゃないかな?せっかく一氏くんが来てもいいよって言ってくれたんだから。でも、その時、舞台の上の一氏くんと目が合った気がした。こっちを見ていた気がした。まさか、こんなに暗くて遠いのに。偶然、かな。


「あー…っと、けど、あれやなぁ……最近、スピスタピアス一緒におらへんし、ネタなくってたん忘れとった!スマン!」


女の子たちが、えぇー!とめちゃくちゃ大きな声を出した。思わず耳を手の平で覆う。


「堪忍なー!っちゅーことで、テニス部の日常高校生バージョンをお送りするで!」


一氏くんが次々に白石くんや忍足くん小春ちゃんの真似をして、一人で会話を成立させている。すごい…!そんな感動をするわたしの隣で、小春ちゃんが呟いた。独り言なのか、わたしに言ったのかわからなかったけど。


「ユウくん、意外と気ィ利くやないの。」


目が合ったの、きっと偶然じゃなかったんだ。


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なんかあんまり話進まないけど、ところどころユウジの気遣いを書ければいいなぁと考えてます
ユウジはモノマネLIVEで謙也と財前のモノマネで漫才やってくれたらいいと思うしかもコーナー化←
ペアプリにユウジ出してくれないかな〜

2012.02.05


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