輝く瞳の中に住みたい


幸せっていったいなんなんだろう。おいしいご飯を食べた時とか、みんなと頑張って作り上げたステージが大成功だった時とか、褒められた時とか、そういえばこの前ガーデンスペースでしののんと綺麗なお花を見つけて、二人で大騒ぎした時もああ幸せだなあって思ったけど。でも、つむぎ先輩の言うのって、きっとそういうことじゃないんだよね。どういうことだろう。私は、つむぎ先輩の隣にいればそれだけで幸せなんだけどな。

「夏目くん、私の幸せとはなんなのか占って頂けませんか」
「それは占いでわかるものなのかナ?静かな場所で自分と向き合ったほうがいいんじゃなイ?」

もやもやと考えながらA組の前を通りかかると、珍しく夏目くんが来ていたから占いをお願いしてみた。水晶玉すら取り出してもらえなかったけど、どうやら話は聞いてくれるらしい。やさしい。

「たぶん試験のときとかよりがんばって考えてるんだけどね、もう頭が爆発しそう」
「うん、君の良いところはまず頑張ってみるところだよネ、でも占いで答えが見つかるとは思えないケド」
「幸せとは…?幸せっていったい…?私はいま幸せ?あれ…?幸せか幸せでないかといったらどっち……?」
「さっき聞いたんだけど今日の日替わり定食は唐揚げみたいだヨ」
「えっやった〜!唐揚げ好き!幸せすぎる!」
「解決したネ」

にっこりと微笑んだ夏目くんに、なんだか居たたまれなくなってうなだれる。違う、そういうことじゃない……。ああ、でも今日のお昼ごはん楽しみだなあ。食堂の唐揚げっておいしいんだよなあ。つむぎ先輩と食べれたらもっと楽しいんだろうけど、食堂は方角が悪いらしいし…。

「待ってちがう、そういう即物的な幸せじゃなくてね?」
「おや、難しい言葉を知ってるネ?」
「……夏目くん、私のことアホだと思ってるでしょ」
「そんなことない、とっても可愛らしくて好感が持てるヨ」
「か、かわ…?!好感?!」

フフ、と少しだけ唇をしならせて喉の奥で笑う夏目くんに、顔に一気に血がのぼるのがわかる。からかわれているとわかっていても赤くならざるをえないこの破壊力。つむぎ先輩といい、夏目くんといいやっぱり魔法使いユニットってすごい。
赤くなった顔を誤魔化すようにうろうろと目線をさ迷わせていると、明星くんと目が合う。にこりと笑った明星くんはこっちへ近づいてきたと思ったらものすごく至近距離で顔を覗き込まれた。な、なに?!なんで?!

「わあ〜、名前の目がなんかキラキラしてる!きれい!」
「なっ、なに?どうしたの明星くん、あの、かお、顔ちかっ」
「いいな〜キラキラだ!俺欲しくなっちゃうな」
「えええっ!」
「バルくん、いくらキラキラしてるからって、そう不躾に女の子の顔を覗き込むのはどうかナ?」

あ〜ごめんごめん、と顔を離した明星くんはまったく悪びれた様子もなく私と夏目くんの間にしゃがみこむ。

「なんの話してたの〜?名前と夏目なんて、けっこう珍しい組み合わせだねっ」
「ああ、なんだか難しいことで悩んでるみたいでネ」

夏目くんの、なんだか含みをもたせたその笑顔に引っかかるものがあるけど。どうせ私は今日のお昼ごはんくらいで簡単に幸せになれるような人間だけど。
心配そうな表情になった明星くんに、慌ててさっきまで話していたことを伝えると、あまりピンときていないように首を傾げた。大きな目が、忙しなく瞬かれる。

「幸せ〜?名前って、なんか難しいこと考えてんね」
「うん、考えれば考えるほどこんがらがって、ふと、あ〜今は確実に幸せじゃないな…って思う」
「え〜じゃあやめなよそんなこと!外に出て散歩とかすれば?お日さまキラキラして幸せだぞ〜」
「僕もバルくんと同じ意見だけどネ…考える意義はあるけど、それで塞ぎこんでたらどこかのセンパイと同じだヨ」
「あっ、そうそう青い先輩!」

明星くんが、パチンと指を鳴らして急に飛び起きるからびっくりした。思わず後ずさってしまったけど明星くんは気にした様子もない。

「青い先輩にきいてみれば?ほら、なんか頭良さそうだし!」
「あ、青い先輩って?」
「え〜青い先輩は青い先輩だよ、名前わかんないけどクラス知ってるから連れてってあげよっか?」
「や、やだよ青い先輩なんてなんかこわそうだもん…」
「別に恐くないって!な〜夏目」
「夏目くんの知ってる人?」
「ああ、つむぎのことだヨ」
「えっつむぎ先輩?……ああ、青葉先輩だから?」
「名前知り合いなの?じゃあ話は早いじゃん、聞いてくれば?」

そんな、今日の献立聞いてくれば?みたいなノリで聞いてくることなのかな…?重くない…?つむぎ先輩に会えたらそりゃあ一瞬で幸せになるけど、この考える原因になってるのがつむぎ先輩だし、それになんとなく聞きにくいっていうか。たまに話してても、すごく遠いところを見てるようなときがあるし。あ〜〜〜でもつむぎ先輩に会えるかもと思ったらとても会いたいかもしれない。あの優しい雰囲気に触れたい、かもしれない。でも、いいや、行こう!

「うん!聞いてくる!」
「いってらっしゃ〜い」
「……センパイに聞いたってどうせ辛気臭くなるだけだと思うけどネ」
「まあまあいいじゃん夏目、ていうか名前もうすでに幸せそうだけど」
「えっ」
「なんかまた目がキラキラしてるよ!」
「えええっ」
「いいな〜そのキラキラ俺もほしいなあ」
「ちょ、明星くん待って、ちょっ、顔、顔近い!」
「だからバルくん女の子の顔を………まあ、なんかもういいカ」
「諦めないで夏目くん!」







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