まなみと ダイエットする


「えっお昼それだけ?」
「うん、ダイエットする!ここに宣言する!」

チサちゃんの机の上に置かれたのは、小さなゼリーが2つと購買で売られている中でもひときわ小さなサラダだった。以前2人で、ウサ吉の餌にするにも少なすぎると笑った例のサラダを、おいしそう〜と完全な作り笑いでつつくチサちゃんはなんだかいたたまれないし、自分の大きなお弁当箱を開くのも申し訳なくなってくる。

「あ〜、オレ先輩たちんとこ行ってこようかな」
「えっなんで?」
「いや…食べにくいし」
「気にしないでよ!サラダおいしいしいっしょに食べよ!」
「え〜」
「いやほんとおいしいよこのサラダ!ちょっと食べる?」
「いや……やっぱりオレ先輩たちんとこ行ってくるね」
「待って待って待って」

広げたお弁当箱の包みをまた閉じて、席を立とうとするとブレザーの端を思い切り掴まれる。ふだんなら、いってらっしゃ〜いなんてお弁当のおかず見ながら手を振ってくるくらいなのに、なんで今日に限って。そもそも減量中って人の食べるところ見るの辛いんじゃないか?

「まなみ待ってほんと、ほんとに待ってお願い」
「え〜昼休み終わっちゃうから」
「ひとりでこのご飯食べてたら虚しさに気が狂う気がする」
「おいしいんじゃないの」
「そんなわけない……だから待って…そこにいてまなみ…」
「俺だって食べにくいしさ〜そもそもなんでダイエットしてるの?」

なんにも変わってないように見えるのに、なんでチサちゃんは泉田さんより過酷なダイエットなんかしてるんだろう。こんなの、筋肉が落ちてかえって太りそうだけど、そういうの考えてやってるんだろうかチサちゃん。言いにくそうに口を開けもごもごさせるチサちゃんをまじまじと見てみたけど、筋肉がついたようには見えない。小さくて薄いままだ。

「あの、絶対ないしょね」
「うん」
「部活の先輩にも言わないでね」
「わかったって」
「実は、2キロも太った」
「うん」
「いや、うんって……うん…」
「え……それだけ?」
「いやいやいや大きいよ!この差は大きい」
「そんなの、俺だってそれくらい増えるときあるよ」
「えっ!」
「そんなウサギみたいなご飯にしなくったって元に戻るよ」
「ほんと?!」
「運動しなよ」
「う……今日からジョギングやる!」
「え、いっしょに山行こうよ、使ってない自転車貸してあげるよ」
「いやそれ痩せる前に死にそう」

ほっとしたように笑ったチサちゃんが、さっきまで小さくちぎりながら食べていたレタスを口に放り込む。こうやって食べるとちょっとだけおいしくなる、と目を丸くして本当においしそうに食べるから、じゃあ俺もとお弁当箱の包みを再度開ける。

「このゼリーあげるから、まなみのお弁当のここからここまで食べていい?」
「割にあってなさすぎない?ダメ」
「お腹すいた〜」
「ご飯買ってくれば?」
「今行ってもいいご飯残ってないからまなみのお弁当のほうがおいしい」
「ローカロリーのものたくさんあると思うよ」
「まなみのお母さんの唐揚げ食べたい」
「ダメ〜」







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