まなみと 高嶺の花


「チサってほんとに真波くんと仲良いよね」
「そうかな?」
「そうだよ!いっつも一緒にいるんだもん」
「そんなに一緒にいるかな?まなみあんまり学校にいないと思うけど」
「学校にいるときはいつもべったりでしょ!」
「べ、べったりなんかしてないよ!」

否定の言葉も友達には届かなかったみたいで、今日はまだ来ていないまなみの席に座って地団駄を踏んでいる。

「真波くん紹介してよ」
「紹介もなにも、私たち同じクラスじゃん」
「そうなんだけど…真波くんってなんとなく話しかけにくいんだよねえ」
「ああ、まあ…」
「自転車部のレギュラーだし行動もちょっと変わってるし、いかにも天才って感じじゃない?」
「う、うーん?そう?」
「スタイルも良いし顔はかっこいいし、まさに高嶺の花」
「ええ、そんなに可憐なものかなあ…」

凛と佇むまなみを想像しようとして、瞬時に諦めた。まなみが背筋を伸ばして立ってるとこなんて想像もつかない。部活でのまなみは知らないけど、教室にいるときはいつもふにゃふにゃくたくたと机の上に突っ伏しているんだから。

「まなみ、喋ってみるとふつうだよ」
「今度喋ってるとき仲間に入れて」
「あ、じゃあ今から三人でお喋りする?まなみ、もうすぐ来るみたいだよ」
「ええっ今から来るの?何しに?」
「さあ…部活じゃないかな……」
「あー、まあまだ世界史の授業残ってるし…?」
「ただの気まぐれだと思うけどね…」

「真波くんってやっぱり変わってるなあ」友達はどこか感心したように息を吐いて、ふだんまなみがするみたいにくたくたと机に突っ伏した。その机に座ると力が抜ける呪いでもかかってるんだろうか?友達の綺麗な髪の毛がさらさらと机に散らばっていく。

「でもさあ、チサ」
「んー?」
「真波くんって、モテるんだからね」
「みたいだね」
「みたいだねって、アンタ」
「や、わかってるんだけどさ」

まなみが女の子からきゃあきゃあ言われてるのも、告白されたりラブレターもらったりしてるのも知ってる。その度に心がなんとなくもやもやして、これでまなみと遊びまわったりくだらないことずっと喋ったりできなくなると思うと寂しいとも思う、けど、でも、まなみと付き合いたいのかと言われるとそれもなんだか違う気がする。
まなみとぴったりくっついてるところを想像したけど、途端に目の辺りがじわじわしてきたから煩悩よ飛び出せ!とばかりに頭を振って忘れることにした。
幸いにも友人は少なくなる休み時間を気にしてか時計を見ていて、突っ込まれずにすんだ。

「真波くん遅いね」
「やっぱり部活だけにしたんじゃない?」
「ええ、つまんない」
「部活見に行ったらいると思うよ」
「あー、三年生怖いんだよね…」
「わかる、すごい目つき鋭い先輩いるよね」
「チサも行く?」
「わたしはいいや」
「えー、行こうよ」
「だって明日になればまなみ学校来るもん」

今日見たいドラマがあるんだ、と言えば友達に頭を叩かれた。容赦がない、痛い。







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