署中見舞い 水着


「やはりビキニだろう、これが嫌な男なんておらんぞ」
「いやあ尽八わかってるなあ、やっぱり水着と言ったらビキニだろ」

うんうん、と満足気に頷いた新開は水着売り場のビキニコーナーにざっと目を走らせたかと思うと、いかにも!と言った感じの危ういビキニを手に持っていた。黒字に同色のレースがついていて可愛いことは可愛いが、サイドは紐だし心なしか布面積が他のより小さい気がする。さすが新開、水着の選び方にも百戦錬磨感が伺えてしかたない。隣では東堂が感心したように頷いている。

「や、でも、そんな思いっきり泳げなさそうなやつやだよ」
「おめさん、思いっきり泳ぐ気か?」
「お前…いくら真波でも彼女と海に行ってただ泳ぐだけなわけないだろう」
「え、ええ、でも山岳くんだよ…」

もしかしたら遠泳とかするかもしれないじゃん、と私にしてはかなりリアルに言ったつもりだったが、二人は鼻で笑っていとも簡単に一蹴した。

「どこの世界に彼女とのデートで遠泳する奴がいるんだ」
「せいぜい足つかないとこまで行くくらいだろ?」
「でも私たちの初デート、坂だったから」
「安心しろチサ、海に坂はないぞ!」
「そうだな、坂が絡まなかったら真波だってふつうの男だと思うぞ」

だからこういう可愛いの着て喜ばせてやれよ、と再度差し出されたビキニ。完全に下着と同じ面積のそれになんだかやけに照れてしまうけど、これを着て山岳くんが「わあ、可愛いですね!」って言ってくれるかもしれないし、顔を赤くしながら「か、可愛いですね」ってはにかんでくれるかもしれないし、もしかしたら、肩にタオルをかけてくれてそのまま肩を組まれて抱きしめられるかもしれない?そんなの、もう答えは決まったようなものだ。

「わかった!ビキニにする!」
「よく言ったぞチサ!」
「真波もきっと喜ぶなあ」
「可愛いですねって言われたらどっどうしよう」
「照れながらありがとうって言って手繋げばいいさ」
「ああ、そのまま波打ち際を散歩してもいいしな」
「あと、あと抱きしめられたらどうしよう!」
「真波ってそんなに積極的なやつか?」
「まあ、真波も若いしな。とりあえず大事にならない程度に抱きしめ返してやればいいのではないか?」
「あんまり胸なんか当ててやるなよ」
「なんか、今から緊張してきた」
「今週末だろう?早すぎるぞ」
「まあなんにせよ、楽しいといいな」
「うん!新開も東堂もありがと!」














「おいおいチサ、おめさん昨日学校休んだのって、まさか真波と海行ったからか?」
「ま、まさか、まさかチサお前まさか」
「いや、そ、そうだけど二人が思ってるのと違うから!そういうんじゃないから!」
「でも彼氏と海行った次の日、体調不良で学校やすんだら、なあ?」
「お前…勢いに任せてとんでもないことになってはいないだろうな?」
「だから違うって!やめてよそういう想像!」
「じゃあなんで昨日学校休んだんだ?」
「お、泳ぎすぎて…」
「は?」
「泳ぎすぎて!筋肉痛がひどかったの!」
「もしかしてお前たち遠泳したのか?」
「遠泳じゃないけど…トレーニングかってくらい泳いだ…」
「うわあ…」
「それは…」
「で、でもいいの!山岳くん何回も可愛いですねって言ってくれたから!ほんとすごい嬉しかったからいいの!」
「お前ほんと…」
「…また俺たちが相談にのるからな、がんばれ」
「うん?ありがと!」










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