まなみと 校則違反


「なんていうか、まなみも運悪いよね」

まなみってすごく強運のイメージがあったけど、と続けるも、珍しくしょげかえったまなみからはなんの返事も聞こえない。どうやら、遅刻で学校へ来る途中コンビニへ寄ったところ、風紀担当の先生と鉢合わせたらしいのだ。「遅刻の上に堂々とコンビニへ寄り道とは校則違反も甚だしい!」とおもいっきり叱られ、さらには資料室の掃除まで言い渡されたまなみが落ち込むのも無理はない。あの先生って、そんなに厳しくないはずなんだけど、さすがに遅刻と寄り道は見過ごせなかったのかな。まあ、まなみが悪いんだけど、ふだん元気なまなみが落ち込んでるのも変な感じ。

「まなみ元気出して!掃除手伝うから!」
「うん、ありがとうチサちゃん」
「ふたりでやったらすぐ終わるよ!」
「うん」
「終わったらコンビニ行ってご褒美にお菓子いっぱい買お!」
「俺、そのコンビニが原因で怒られたんだけど…」
「あ、えっと…じゃあラーメンでもいいよ!」
「…ほんと?俺、味噌食べたい」
「わたしチャーシュー麺食べたい」
「じゃあチサちゃんにトッピングのチャーシュー奢るよ」
「ええ、そんなにチャーシューいらない」
「豪華だと嬉しくない?」
「でもチャーシュー麺にチャーシュー上乗せしたらそれはもうなんなの…」

麺が見えないほど敷き詰められたチャーシューを思い浮かべたら、なんだか胃のあたりがムカムカしてきた。まなみはもう今すぐにでもやってみたそうにウズウズしてるけど、とにかく元気が出たみたいで良かった。

「でもさあ、遅刻が校則違反なのかな?寄り道のほう?」
「寄り道じゃないかな?俺、いつも遅刻だけど校則違反って言われなかったし」
「ていうか遅刻しないのが常識なんじゃないかな…」
「そうかも」
「そうかもじゃないよ!」
「朝は起きてるんだけどな」
「じゃあなお悪いんじゃない?坂を登りたいという欲求に打ち勝てなかったことになるし!」
「うわあ、それかっこいい!」
「先生すみません…俺、どうしても坂を見ると……気づいたら頂上にいるんです…」
「今日も……欲求に負けてしまった…俺は…俺は…」

手で顔を覆い隠して震える真似をするまなみにわたしの肩も震える。これ、まなみがやるとすごく本当っぽいからおもしろいけどちょっとゾッとする。おもしろいけど。

「まなみすごく上手いんだけど、もしかしてそういうの毎日やってるの?」
「今初めてやった」
「嘘だあ」
「あ、坂だって思って登るから」
「思ったより軽いんだね」
「そんなもんだって」
「そうなの?よくわかんない」
「俺もよくわかんないけどさ」
「……とりあえず今はっきりしてることがあるんだけど、まなみ聞いて」
「なに?」
「あのね、さっきから!塩辛いものが食べたい!」
「わかる!俺も!」
「さっきラーメンの話したからだよね……今すぐ食べたい…」
「掃除サボる?」
「いやいやそんな…さすがにそれは」
「あ、さっきの山に登りたい衝動で誤魔化す?」
「罰掃除をサボる程の衝動ってもはや病気だよ!だめ!」
「ちぇっ」
「ちぇっじゃない」
「あーラーメン食べたい」
「わたしもー」







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