まなみと テスト勉強会


ど、どうすればいいんだろうこの状況。すごくこわい。今、わたしの目の前には強面の上級生四人が真剣な表情をしてわたしを見ている。こわい。こわいんだけど、その上級生たちの後ろから苦笑いでまなみがこっちを見ていて逃げることもできない。なに?まなみなにかしたの?わたし別にまなみの友達で保護者とかじゃないです……

「岡本チサか?」

金髪でいちばん大きい人が、わたしを睨みつけるようにして話すから返事をした声があからさまに震えた。ぅうはいって。ぅうはいって!まなみが上級生の後ろで肩を震わせている。手の震えが収まったら殴ってやりたい。

「おいフク!あんまり怖がらせるな!かわいそうに、震えているではないか」

大丈夫か?すまないな、と顔の綺麗な先輩が一歩進み出て、わたしと目線が合うように屈んでくれた。ぐっと近寄った顔はやっぱりすごく綺麗で、思わず顔が熱くなる。これがおとなの魅力ってやつかな…

「すまないな、俺たちは君にちょっとお願いがあってな」
「お、お願い?」
「ああ、」
「あのさァ、あんたこの不思議チャンに勉強教えてやってくんネ?」
「ぅはいっ!」

突然割り込んできた先輩に驚いて後ずさると、足がもつれて転びそうになった。咄嗟に伸びてきた手に捕まったが、お礼を言おうと顔を見た瞬間また足がもつれて転びそうになる。この先輩、こわい!なんか、すごく睨まれて文句言われてる!こわい!

「あっぶねーな!おい真波ィ、お前の友達大丈夫かァ?!」
「えー、荒北さんが怖いんですよ、チサちゃんってこう見えてこわいものダメなんです」
「それどういう意味だ!」
「ちょ、靖友落ち着けって」
「俺はまだるっこしーのが嫌いなんだよ!」
「荒北!この子が泣きそうではないか!落ち着け!」
「ちょ、寿一なんとか言ってやってくれよ」
「いやしかし…俺がなにか言ったらまた彼女が……」
「寿一、さっきの気にしてんのか?」
「俺はこわいだろうか……」
「フクちゃんが怖いとかないからァ!こいつがビビりすぎなんだっての!」
「こいつとはなんだ荒北!女子に向かって失礼だぞ!」

ぎゃあぎゃあと言い争い始めた上級生たちはもうわたしのことなんて眼中にないみたいで、金髪の先輩がこわいかこわくないかというところで白熱していた。わたしの意見を言わせてもらえば、こわいです。威圧感のあるところとか、鋭い目とか、大きいところとか、こわいです。

「チサちゃん、なんかいきなりごめんね」

ひょこりと、まなみが喧騒から抜け出てきた。苦笑いでごめんごめんと頭をかいている。ごめんと言われても、もうわたしにはなにがなんだか?いったいどういう状況なの、これ。

「まなみ、なにかしたの?」
「うーん、したっていうか、言ったというか」
「な、なに?」
「俺さあ、次のテストで赤点とるとまずいんだ。だから勉強教えて」
「勉強?いいけど」
「ほんとー?やった」
「数学以外ね」
「わかってるって」
「それはいいけど、これはいったい…」
「んー、チサちゃんに勉強教えてくれるかどうか聞いてみるって言ったら着いてきてくれた」
「へ、へえ、優しいんだね…見かけによらず…」
「チサちゃんの驚きようと言ったら笑ったよね」
「しょうがないよ!あれはしょうがないよ!」
「荒北さんも主将もぜんぜん怖くないのに」
「怖くないなら早く止めてきなよ、先輩たち喧嘩みたいになってない?」
「あれ普通だから〜」

にこにこと笑いながら先輩たちを見るまなみの後ろからそっと顔を出せば、まだまだ言い合いは終わりそうにない。わたし、どうすればいいんだろう?こっそり帰っちゃいたいなあ。







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