まなみと 真波くん

真波くんの第一印象は、掴み所のなさそうな人、だった。同じクラスだけど喋ったことはないし、あんまり関わりもなかったから友達の噂とか行動くらいでしか知らないけど。先生に怒られても笑ってたり、朝はだいたいいなくて授業後に学校来たり、不良ではなさそうだけど関わらないほうがいいな、と思ってた。

「ねえねえまなみ」
「チサちゃんさあ、俺の名前ひらがなっぽく呼んでるでしょ」
「まなみって柔らかくてかわいい」
「真波だよ、真っすぐの真に波」
「まなみ」
「ほらまた」
「なんかもう定着しちゃった」

しょうがないなあ、とわたしの机に頬杖をつくまなみは、勝手にわたしのシャーペンで机に落書きをしている。席替えで隣同士になって、なんとなく話すようになって今ではいちばんいっしょにいる友達になったのだから人生とは不思議だ。あれだけ関わりたくないと思っていた真波くんなのに。ちなみに、まなみがこうして何気無く人の机に落書きをするので、わたしの消しゴムの消費量はなかなかのものだ。いつも消しカスだらけで嫌になる。

「チサちゃん今日のお昼なにー?」
「今日はお弁当」
「おかずなに?」
「昨日の残り物だから、たぶん唐揚げと野菜とご飯」
「唐揚げちょうだい」
「まなみお弁当?」
「学食か購買」
「じゃあさ、学食でハンバーグにして半分ちょうだい」
「えー俺足りないよそれ」
「わたしだってまなみに唐揚げあげたらおかず足りないよ」
「ついてくる野菜とお味噌汁あげる」
「じゃあ唐揚げあげない」

ええ。たいして感情がこもっていないのは、たぶん机の落書きが白熱してるからだ。書き込みの量がすごい。誰の机だと思ってんだ。誰が消すと思ってんだ。

「まなみそれ自分で消してね」
「ええ、消さないでよ」
「消すよ!手真っ黒になるじゃん!」
「だってこれすごいうまく描けた」
「知らないよ、ていうかなんなのそれ」
「ロボット」
「全然見えない」
「目悪くなったんじゃない」
「まなみ絵下手だよ」
「チサちゃんに言われたくない」

ああいえばこう言う。まだガリガリと机に書き込んでるまなみの手をはねるように消しゴムを滑らせる。ロボットらしきものの頭が一瞬にして消えて、まなみが「あっ!」と地味に驚いたような声をあげた。

「わははは、消しゴム魔神には敵わないようだな正義のロボットよ」
「今頭をつけてやるからな!もう少し待ってろ!」
「ははははは、させるものか!」
「くっ、は、はやい」
「お前を倒せば宇宙はわたしのものなのだー!」
「えっ、そんな壮大な設定だったの?」
「わかんない。適当」


「おーいお前らー!次移動になったぞー!」
「「はーい!」」







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