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一通りの自己紹介を受けた後、ぐぅーぎゅるるるぅとこれまた大きな腹の虫が鳴り響き「サンジー!!飯にしよー!!」と叫ぶルフィにより甲鈑からダイニングキッチンへ移動する事になった。

一流コックであるサンジは突然のご指名でも手際よく次から次へと料理を作るとあっと言う間にテーブルを色とりどりの皿で埋め尽くす。
各々が自分の席に腰を降ろす中、この輪に入る事に躊躇していた俺をサンジは恭しくエスコートし、されるがままに引かれた椅子についた。
わいわい食事を始める彼らを見渡しては目の前の暖かな料理へ視線を降ろす。
漫画の中で何度も絶賛されていたサンジの料理が、今目の前にある事が嬉しくて内心ドキドキしながら一口食べてみる。
こんな料理食べた事ない!!それ程の美味しさに萎縮していた俺の気持ちも食欲へと変わる。

「うめぇだろ!サンジの飯は世界一だ!」

ガチャガチャと音を立て物凄い速さで胃袋へと流し込むルフィの姿に呆気に取られながらも大きく頷き返す。

「うん、凄く美味しい」

いつの間にか集まっていた彼らの視線と思いの他響いた俺の一言に皆笑ってくれる。
自称異世界人の俺に対して皆いい奴過ぎるだろ!泣くぞ!

それに同じ釜のなんたらとよく言ったもんで一緒に食事する事は人と人の繋がりを良くしてくれるのか、さっきまでのぎこちなさも無くなって彼らとの食事を楽しいと感じた。

食事もほとんど進んだ頃、ルフィが自分の分を食べ終えてしまうと今度は別の皿へと手を伸ばしたのをきっかけに男達の間で熾烈なバトルを繰り広げてる。

そんな彼らを傍観する俺は、フォークで刺したサラダをパクリと食べながらさっき見た映像がなんだったのか考えていた。俺以外にはあの意味の分からない映像は見えないらしく誰も何も言わなかったしすぐに消えてしまった。
何だったんだろう?あれもルフィの悪魔の実の能力?んな、アホな。
けど、あれはどこかで見た事があった気がする。

うーんと考え始めた俺を引き戻したのはウソップの声だ。

「しっかしナナシがいた時はびっくりしたなぁ」

「俺もびっくりしたぞ!」

「そうね、そんな格好した人が無人島にいるなんて思わないもの。ナナシはどこかのお嬢様?」

ウソップとチョッパーの言葉を聞いたナミが俺に聞いてくる。お嬢様?
ナミの言葉に俺はああと納得する。今の俺の格好は控えめながらもフリルをあしらった黒のエプロンドレス、いわゆるロリータ姿だ。この特殊な格好を見ればそう取られてもおかしくない。むしろこんな格好はここでは浮いてるだろう。


「私も気になるわ、あなたの世界では男性がそういう格好をするのかしら?」

紅茶を飲みながら素敵な笑顔で放たれたロビンの一言に水を打った様に静かになる賑やかなダイニング

「気づかれたの初めてだ」

少し顔を合わせただけでこんなに早く気づかれたのは本当に初めてだった。驚きつつも俺がさらりと言葉を返したとたんロビンと俺以外の驚きの声が上がる。

「嘘っ?!ナナシって男なの?!」

「詐欺だろおい…」

「え?え?どういう事だ?え??」

目を見開いているナミと驚愕しているウソップ、チョッパーに至っては意味が理解出来ておらず他の仲間の顔を見渡している。

「ヒュー!、ナナシも中々に変態とは驚いたぜ」

「………」

「ん?ボンちゃんみたいな奴って事か?」

フランキーは関心した様に頷いてゾロは何も言わないけれど困惑しているのか眉間には深いシワ、首を傾げるルフィに聞かれた相手が誰かは分かんないけど頷いておいた。

そして一番悲惨なのが……

「う、嘘だ!ナナシちゃんが野郎だなんて、俺は信じない!こんな白魚のような美し手を持つナナシちゃんが!!さぁ、嘘だと言ってくれ!」

俺が座る椅子の横で片膝を付き俺の片手を握り締めるサンジは祈る様に聞いてくる。その顔は鬼気迫る物があって、若干引いた。
漫画の中でも人格変わってんじゃないのかって位に女の子が大好きサンジにとってはよっぽど受け入れられない事なんだろう。その姿があまりにも哀れで最初の内に言っておけばよかったほんの少しだけ後悔

傷が浅くで済む様に言葉を選んで事実を言ってあげようと口を開きかけるも、びよんと伸びて来た手の平が躊躇なく俺の胸に伸びてはパンパンッと触って確認。

「おぉ!ホントに胸がねェ!男だ!!」

「男にみえねぇのに男か!!ナナシおもしれぇ奴だな!」ケラケラと笑い大声で男、男と連呼するルフィを「やめんかっ!!」とナミが殴った。
普通ならセクハラものであるけれど生憎俺は男な訳で胸を触られたって恥じらう事も何もない。あんな堂々と触られたのはびっくりしたけど。

だから、取り敢えず

「ごめん。」


サンジはそのまま真っ白に燃え尽きた。


トラップにご注意を、
(あ、この魚おいしい)

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